研究課題/領域番号 |
16J40080
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤澤 奈都穂 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2020-03-31
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キーワード | パナマ / コーヒー / アグロフォレストリー / 中米 |
研究実績の概要 |
コーヒーは、日陰環境で栽培することで、長期間に渡って安定した生産が可能となる。そのため日陰をつくる高木(庇陰樹)のもとで栽培されることがある。これはコーヒー・アグロフォレストリーと呼ばれ、植生の保全に繋がる農法としても注目されている。本研究は、このような栽培方法に着目し、中米における小規模コーヒー生産者の生業の安定化と地域の森林維持の両立に貢献するコーヒー栽培の特性を検討することを目的としている。そのため、①まず国や地域の社会・経済的な背景をふまえつつ、コーヒー栽培を軸とした生業戦略の形成過程を村や世帯レベルで明らかにすること、②また地域住民の生業を支え地域の植生を維持するうえで、コーヒー栽培のどのような特徴や役割が重要であるのかを明らかにすること、を課題とした。 以上のような目的の達成に向け、平成30年度はまずこれまでのパナマの事例の分析を進めた。主に、課題②に答えるため、庇陰樹の樹種構成と住民の庇陰樹選択による樹種構成の形成過程を整理した。そして、地域住民による小規模なアグロフォレストリーをテーマとしアフリカ・東南アジア・オセアニアをフィールドとした研究者と研究会を実施した。これにより、パナマのコーヒー・アグロフォレストリーにおいては、多様な生業との両立可能性が住民の農法に大きな影響を与えていることが特徴として見出された。それによりコーヒー栽培地において多様な樹木が残され、また多様な生態環境が維持されることが明らかになった。 課題①に関しては、自給用作物を栽培する焼畑が人びとの生業戦略だけでなく、コーヒーの栽培方法にも大きな影響を与えていることが明らかになりつつあることから、焼畑を継続する要因や焼畑が果たす役割についても検討を進めた。 今後は、以上のような地域の実態を、国や中米地域全体の中に位置づけることで地域の特色の理解を深めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、地域住民の生業を支え地域の植生を維持するうえで、コーヒー栽培のどのような特徴や役割が重要であるのかを、異なった背景をもつパナマとメキシコという二地域間それぞれで明らかにする。そして双方の事例を比較することで、中米内の他地域間でも汎用可能なコーヒー栽培の特性を探ることを目指している。現在は、2009年から調査対象地域としていたパナマでの調査・分析は計画通りに進んでいる。調査対象村におけるコーヒー栽培の実態や、住民の生活におけるコーヒー栽培の役割、そして植生の維持に寄与しうる人びとの実践が明らかになった。さらに、パナマ国内では地域によってコーヒーが国内市場、国際市場、オルタナティブ市場それぞれにおいて取引されており、出荷先の市場により、小規模農家の戦略も異なることも明らかになってきた。メキシコの事例については、当初の予定と進捗状況は異なるが、パナマの事例において市場の違いによりどのように戦略が異なるのか調査をすすめることが最終的な研究目標到達のためにも有効と考えるため、メキシコの調査計画を精査し直した。以上を鑑みて、研究の進捗状況は概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで、パナマの事例を中心に研究を進めてきた。今後比較のためにメキシコの事例を扱う予定である。ただし、これまでの調査の中でパナマ国内でフェアトレードを実施するなど市場の異なる小規模農家の存在が明らかになった。国の社会・経済的背景を共有しながら、異なる戦略をとっている地域である。このような地域間を比較することは、パナマの国の特色を理解するために有効であると考える。メキシコにおいてはパナマと同等の調査を実施し2地域を比較する予定であったが、パナマの調査対象を拡大しつつ、メキシコでも同等の調査を進めることは、時間的な制約から困難である。目標到達のためには、パナマの調査を重視することがより有効と判断した。そのため、メキシコにおける調査内容を精査し、特に重要と考えられる事柄について重点的に調査していきたい。
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