研究実績の概要 |
骨肉腫(OS)は若年者に好発する骨原発悪性腫瘍である。病初期から肺転移が存在するため、全例で化学療法を行う。しかし、肺転移から再発・増悪した場合に有効な手段はなく、生存率の改善には、治療抵抗性肺転移に対する新たな治療を確立する必要がある。 本研究課題は、肺転移の腫瘍を取り巻く免疫担当細胞など化学療法後の腫瘍微小環境が、治療に対する抵抗性を高めているとの仮説のもと、その機構を標的とした治療を確立することを目的としたものである。 所属研究室で樹立された骨肉腫細胞 AXTの同種移植モデルを用い、これまでに我々は、化学療法後に肺転移組織で発現上昇する遺伝子として、NFκBの作用を増強するものを同定している。そこで薬剤スクリーニングで、AXT細胞に対し抗腫瘍効果を呈したもののうち、NFκB経路に関与する薬剤として、多発性骨髄腫の治療薬 Bortezomib(BZ)に着目した。 BZは単剤投与で、in vivo, in vitroの双方でAXTに対する抗腫瘍効果を呈した。また、AXTより樹立した抗癌剤耐性細胞 AXT-ARに対しても、抗腫瘍効果がみられた。抗癌剤とBZを併用すると、in vitroでは効果の増強がなかったのに対し、in vivoでは相乗的な腫瘍縮小効果を得た。以上から、BZは骨肉腫細胞AXTの抗癌剤耐性を改善し得ること、また、AXT/AXT-AR由来の骨肉腫の非腫瘍細胞成分(=微小環境因子)に作用し得る可能性が示唆された。 さらに、AXTを移植し肺転移を起こしたマウスの肺組織を薄切し、生体外で培養・観察することで、抗癌剤投与後、腫瘍細胞の細胞死とともに、多くの血球系細胞が肺転移組織内に集簇していくることを見出した。今後は、その血球系細胞の同定・機能解析とともに、BZでその働きを制御し、肺転移に対する効果につながるのかについて検証を続ける予定である。
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