研究実績の概要 |
前年度までに、マトリックス塗布方法の検討を行い、ラットの硝子体にアンチセンス核酸を投与して、薬物動態解析を検討した。今年度は、マトリックス塗布の工程における再現性向上のために、新しいマトリックス塗布の技術開発を行った。 質量分析イメージングでは、マトリックス塗布がボトルネックとなっている。 本研究では、マトリックスが予め塗布されたテープを用いて、マトリックス塗布を行う。4種類の市販のテープ(Scotch tape (CT-18, BH-24), tape 240, tape 850)にTM sprayerを用いて均一にマトリクスを塗布した。マトリックスの種類としては、2,5-Dihydroxybenzoic acid (DHB) と α-cyano-4-hydroxy-cinnamic acid (CHCA)を検討した。イメージング測定の結果、テープ法は、従来のマトリックス法と同様に生体分子をイオン化することが分かった。また、主要なリン脂質であるPC (32:0)のイオンイメージ像を構築した結果、スプレー法と同様な分布を示した。スペクトル強度の定量解析を行った結果、major ionに関しては、Scotch tape CT-18では、スプレー法の8割程度は保持していた。またminor ionに関しては、テープ法によりスプレー法の2倍程度の強度の分子も検出された。このことから、テープ法は、minor ionを高感度に検出できる可能性があることがわかった。本研究で開発したマトリックス塗布テープは、テープを組織サンプルの大きさに切って貼るだけですぐに解析に使用できることから、サンプル調製に要する時間は1分にも満たないと考えられる。本研究の結果は、マトリックス塗布テープが簡便で再現性のよい実験を提供してくれる可能性を示唆した。
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