パーキンソン病(PD)は異常タンパク質蓄積を伴う神経細胞死を特徴とする神経変性疾患であり、治療標的としてタンパク質分解系の一つであるオートファジーが着目されている。本研究ではオートファジー促進剤として、生体内化合物のポリアミンに着目した。ポリアミンは近年、マウス、ハエ、線虫においてオートファジーを誘導することで長寿に貢献する分子として注目されている。本研究では、ポリアミンのオートファジー誘導機構を解明することを目的とし、リソソームに着目した研究を行なった。オートファジーにはリソソーム機能だけでなく、リソソームの細胞内分布が重要であることが近年明らかになっている。我々はポリアミンがリソソームを核近傍に移動させる活性を有することを見出し、本年度はその分子メカニズムを解析した。 阻害剤を用いた解析でDyneinモータータンパク質依存的にポリアミンはリソソームをMicrotubule organizing center近傍まで移動されることが明らかになった。さらに本現象に関わる分子をsiRNAや各種阻害剤を用いて探索したところ、ある2つのタンパク質が関わっていることを見出した。さらに、核近傍に集積したリソソームはオートファゴソームと融合しているオートリソソームであることが免疫染色や光-電子相関顕微鏡法(CLEM)による評価で明らかとなった。以上の結果より、スペルミン処理によりリソソームがMTOCに集積すること、さらにオートリソソーム形成が促進されることが明らかとなった。
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