研究課題/領域番号 |
16J40139
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
柳川 亜季 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 脆弱性 |
研究実績の概要 |
衛星データを用いたグローバルなResistance/Resilienceの算出を行った。その結果、気象条件が10-25%程度の確率で起こる干ばつや洪水に対しては生物的な環境要素がResistance/Resilienceに大きくかかわっていたが、Extreme Climateである、200年に5回程度の気象条件では、多くの地域で標高が主要な要素であった。一方で、平年並みの気象では、水資源に関わる要素が主要素であり、気象の程度(SPEIの程度)によって、Resistance/Resilienceの依存する環境変数が変わることが明らかになった。これまで、生物多様性はResistance /Resilienceを改善することが指摘されていたが、本研究により、生物多様性が改善できるResistance/Resilienceはその気象の程度に依存し、200年に5回起きる程度の発生確率の干ばつや洪水に関して、ほとんど寄与しないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
“生態系機能と不飽和土壌水分・溶質移動を考慮した乾燥地での持続的最大生産量の提示”のため、生態系機能に関する全球データの整理を行った。生態系機能の評価について、気候変動、特に極端現象を考慮するため、干ばつだけでなく、洪水にも着目して評価を行った。干ばつや洪水のイベント前後の植生指数から生態系機能を評価する計算式を提案し、現在、その成果を執筆中である。また、乾燥地における土壌と植生の関係について、荒廃地の回復過程から考察を行った論文も発表している。論文の執筆と同時進行で、不飽和透水係数に関するグローバルなデータセットの準備も進めており、今後の研究成果が大いに期待されるところである。
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今後の研究の推進方策 |
関係するグローバルデータの収集、解析を進め、最新の将来気候を複数使って(マルチCM)、既存の作物生産モデルを改良し、生態系機能や不飽和の土壌水分・溶質移動を組み込み、持続的な最大可能生産量を概算する。 具体的には、人口、農地、食糧自給率に関して、時系列分析を行い、人口、農地、食糧自給率のバランスの取れた範囲、閾値について明らかにする。・そして、人口増加に対して、将来必要となる食糧の概算量に対して、必要となる農地面積について試算する。各国の水資源状況について整理した上で農地面積を算定し、将来の農地面積として作物生産モデルの入力値とする。・生態系機能を考慮した持続的な新規農地配置アルゴリズムを作成する。 不飽和透水係数は既存研究をレビューし、土壌分類ごとにまとめる予定である。グローバルの土壌分類データはFAO のWorld Reference Base for Soil Resources を利用する予定である。これらのデータを用いて、土壌ごとの不飽和透水係数を与える。そして、主要な作物についての水分・溶質に関するストレス応答関数パラメータについて、レビューを行い、既存の作物生産モデルにストレス応答関数を組み込む。
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