研究課題/領域番号 |
16J40167
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村本 裕紀子 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス |
研究実績の概要 |
近年、様々なHA亜型の鳥インフルエンザウイルス感染が世界各地で発生しており、新型インフルエンザの発生が危惧される。現在、インフルエンザの治療にはウイルス蛋白質NAの機能阻害薬が使用されているが、NA阻害薬耐性ウイルスが世界中で流行したことから、現行の阻害薬とは作用機序の異なる新規抗インフルエンザ薬を開発する必要がある。 抗体医薬品は、一つの抗体が一つの抗原を認識する特異性を利用した、副作用の少ない効果的な治療薬として注目されている。しかし、インフルエンザウイルスの主要抗原であるHA蛋白質の抗原性がHA亜型により大きく異なり、さらに同一HA亜型内でも抗原性が異なるため、季節性インフルエンザや様々なHA亜型からなる新型インフルエンザを含む、全てのインフルエンザウイルスに効果的な抗体医薬品の開発は容易ではない。しかしながら、わずかではあるが、これまでにワクチン接種したヒトのメモリーB細胞や免疫マウスから、複数の亜型のHA蛋白質を認識するモノクローナル抗体が分離され、さらに近年、全てのHA亜型を認識しウイルス増殖を中和するモノクローナル抗体が1クローン分離されたと報告された。これらの抗体は、HA亜型間におけるHA蛋白質の保存領域を認識していた。これらの報告は、全HA亜型を認識し中和するモノクローナル抗体の作出が実現可能であることを示している。そこで本研究は、新型および季節性インフルエンザ対策を目標に、全てのHA亜型のインフルエンザウイルスを中和するユニバーサル抗HA抗体を多数作出することを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、治療用に利用できる高親和性な、かつ、全てのHA亜型のインフルエンザウイルスHA蛋白質を中和するユニバーサルなモノクローナル抗体を多数作出することを目的とする。まず始めに免疫源を準備した。HA蛋白質保存領域を認識する高親和性抗体をマウスに作らせるため、マウスに処置を施し、免疫した。そのマウスの血清中の抗体価を調べたところ、非常に高いことがわかった。そのマウスのリンパ球とミエローマ細胞とのフュージョンを行い、ハイブリドーマの作出を試みた。最初のフュージョン時には、スクリーニングがうまく機能せず、抗体産生ハイブリドーマの選別に苦労したが、さまざまなスクリーニング方法を試したところ、抗インフルエンザウイルス抗体産生陽性ハイブリドーマを選別できるように修正できた。それら抗体産生ハイブリドーマのクローニングを進めた。その結果、これまでに、抗インフルエンザウイルス抗体産生ハイブリドーマを数クローン確立できた。さらに、別の方法で免疫したマウスから得られたリンパ球からも多数の抗体産生ハイブリドーマを作出できており、現在、クローニングを進めている。以上により、本研究はおおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、抗インフルエンザウイルス抗体産生ハイブリドーマを数クローン確立できた。現在、これらのモノクローナル抗体の性状解析を進めている。さらに現在、別の方法で免疫したマウスから得られたリンパ球のフュージョンを行い、多数の抗体産生ハイブリドーマが得られている。現在、これらハイブリドーマのクローニングを進めながら、これらの抗体が認識するHA亜型の同定を進めている。また同時に、別の免疫源を使ってマウスを免疫し、HA蛋白質保存領域を認識する高親和性抗体の作出を進めている。今後これらを進捗させ、培養細胞系におけるモノクローナル抗体のインフルエンザウイルスの中和活性、および動物感染モデルを用いた抗体の抗インフルエンザ治療効果を明らかにし、さらに抗体のHA蛋白質への親和性を測定する計画である。以上により新規の高親和性モノクローナル抗体を多数作出する。
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