研究実績の概要 |
本年度はEUV光源のデブリ抑制効果に関する定量的評価、極浅表面における異種材料間界面制御、宇宙材料や核融合炉壁材へのEUV光照射の準備を行った。 表面改質などの材料プロセスを行うにあたり、前年度提案および試験を行ったデブリ抑制方式の定量評価を行った。まずイオンコレクターによって、アブレーションプラズマから放出されるXeイオンのエネルギー分布の角度分布を直接実験的に計測した。その結果一枚目の回転楕円鏡には10 keV以上に渡る高速のXeイオンが衝突することが分かった。このデータを用い、TRIMコードでXe粒子の反射特性、スパッタされる回転楕円鏡上をコートするAu粒子の反跳特性を計算した。従来型の一枚の楕円鏡によるEUV集光系、および今回試験した二枚の楕円鏡とアパチャ付きデブリシールドからなるEUV集光系に対してサンプル上へのAuデブリ到達量を比較したところ、従来と比較して3桁程デブリが抑制されていることを確認した。 本年度は高フルエンスEUV光照射をしたAgナノ粒子担持PDMS材料に対して光電子分光(XPS)を用いて、異種材料間での化学結合の変化を明らかにした。C 1s, O 1s, Si 2p, Ag 3dピークのピークシフトとピーク面積の深さ方向プロファイルを求めた。EUV光を照射しないリファレンスサンプルと、10,000 ショット照射後のサンプルで結果を比較した。EUV光照射をすることで、界面近傍ではPDMSのメチル基が切断され、またPDMS側のシロキサン骨格主鎖を構成する酸素を介してAgと結合していることが示唆された。前年度の成果では実験的にEUV光が透明材料においても極浅表面で集中的にエネルギーを付与することが確認されており、紫外線などと比較して、この異種材料間の結合が進みやすい可能性が考えられる。
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