研究実績の概要 |
採用第1年度目の目標は,研究課題である時間知覚における感覚間相互作用を検証するために視聴覚同時呈示下で時間縮小錯覚のおこる最適な刺激条件を心理物理実験により確認し,刺激と実験プロトコルを決定し,脳磁図における脳活動計測を実施することであった。そのために,以下にある1,2を実施した。実験環境の構築に時間を要したため,脳磁図計測の本実験実施までは至らなかったが,本実験を行うための予備計測及びプロトコル作成は完了した。なお,本課題の実施に加え,これまでに実施してきた聴覚刺激における研究成果を論文化して現在投稿中である。 1.視聴覚同時呈示実験準備:視覚刺激,聴覚刺激,及び刺激と脳反応とを対応付ける為のトリガー出力をすべて同期させ,脳磁図を用いて多感覚刺激呈示による脳活動を計測するための実験環境を構築した。 2. 視聴覚同時呈示刺激による心理物理実験実施:時間知覚における感覚間相互作用を検証するための最適な刺激条件を心理物理実験により確認し,刺激と実験プロトコルを決定した。本研究で題材としている時間縮小錯覚は,聴覚・視覚(・触覚)で共通して生じることが確認されており,時間縮小錯覚はこれらの感覚すべてにおいて生じるが,生じやすい条件がそれぞれに異なることが明らかとなっている(Arao, et al., 2000; Nakajima, et al.,2004; Hasuo, et al., 2014)。本研究では時間縮小錯覚が聴覚において頑健であるという証左に基づき,聴覚で時間縮小錯覚が起こる時間範囲で実験を行うこととした。その結果,課題成績は視覚 < 聴覚 < 視聴覚の順に判断率が向上し,聴覚に誘導されて視覚の判断が変化することが確認された。これより,設定した時間間隔において聴覚誘発性時間縮小錯覚が生じることが示された。
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