研究課題/領域番号 |
16J40194
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大野 ゆかり 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 市民科学 / ビッグデータ / 種分布モデル / 土地利用 / 気象変動 / 将来予測 / 送粉者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、市民参加型調査やビッグデータから収集されたマルハナバチ類の分布データと環境データを使用して、種分布モデルにより、現在と未来において生息適地が縮小する種や地域個体群を特定し、将来の気候変動に応じた保全対策を提案することを目指している。 種分布モデルで現在の生息適地推定を行った研究結果を論文にまとめることは完了し、現在論文を国際学術雑誌に投稿中である(英語論文1本)。また、市民参加型調査の利点・欠点とその解決法について解説した記事を、種生物学会の和文誌に投稿中である(日本語著書1本)。市民参加型調査は、海外では非常にさかんだが、日本では成功例が少なく、学術研究に利用されることも少ない。市民参加型調査のデータが学術研究に利用される貴重な例である。 画像共有サイトなどで公開されているマルハナバチ類の写真を収集し、全世界レベルの分布調査をすることについては、収集は可能だが、大量の写真が収集され、マルハナバチ類の写真に混じった他の昆虫の写真や物の写真を分類することが困難であることがわかった。日本での市民参加型調査においても、写真に写ったマルハナバチ類の種同定は非常に労力と時間がかかる。そのため、新たに「人工知能による写真のマルハナバチ類の種同定の自動化」の研究を行っている。この研究結果については、種生物学会、生態学会でポスター発表を行っている。人工知能による種同定の自動化は、あらゆる分野に応用できる、学術研究に必須な有効なツールになる可能性がある。 その他に、共同研究を行い、co-first authorとfirst authorの英語論文が国際学術雑誌に受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度は、種分布モデルで現在の生息適地推定を行った研究結果を論文にまとめて投稿すること、現在の生息適地推定で得られたモデルをもとに、過去の環境データを用いて過去の生息適地推定を行うこと、未来の生息適地推定に使用するための環境データの準備を行うことを目標とした。全世界レベルの分布調査を行うことも、採用期間の三年間を通じて目標となっている。 種分布モデルで現在の生息適地推定を行った研究結果を論文にまとめることは完了し、現在論文を国際学術雑誌に投稿中である。 現在の生息適地推定で得られたモデルをもとに、過去の環境データを用いて過去の生息適地推定を行うことも完了した。これらの結果をまとめ、論文を執筆中である。 未来の生息適地推定に使用するための環境データの準備を行うことは、気象データについては作成が完了した。土地利用データについては、先行研究で温暖化による森林分布変化の推定などが行われているため、先行研究のデータを精査中である。 また、画像共有サイトなどで公開されているマルハナバチ類の写真を収集し、全世界レベルの分布調査をすることについては、目標を達成するために、新たに「人工知能による写真のマルハナバチ類の種同定の自動化」の研究を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、種分布モデルで過去の生息適地推定を行った研究結果を論文にまとめて投稿すること、現在の生息適地推定で得られたモデルをもとに、未来の環境データを用いて未来の生息適地推定を行うこと、飼育クロマルハナバチを用いて、飼育温度を上昇させ、実際のマルハナバチの生存限界を調べる実験を行うことを目標とした。全世界レベルの分布調査を行うことも、採用期間の三年間を通じて目標となっている。 生息適地推定については、環境データに問題がなければ、このまま予定通りに進めていく。人工知能による写真のマルハナバチ類の種同定の自動化についても、このまま研究を進めていく。 飼育クロマルハナバチの実験についての計画変更を検討した。飼育クロマルハナバチは沖縄でハウス栽培のトマトの受粉に使用されており、沖縄のハウス内で生殖虫(新女王・雄蜂)が生産されるという情報を得た。申請時はクロマルハナバチのコロニー全部を使用する予定だったが、沖縄の事例から、高温下でもコロニーから新女王蜂が生産されることは確認されたので、新女王蜂が高温下でも冬眠し、越冬できるかどうかが生息限界温度を調べるのに重要だと考えられた。そのため、新女王蜂の冬眠の限界温度について、先行研究を調査中であり、新たに実験が必要であれば、冬眠の限界温度についての実験に変更する。
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