研究課題/領域番号 |
16J40220
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
佐柳 友規 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 微細構造研究部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ミクログリア / マーモセット |
研究実績の概要 |
これまでに特別研究員の研究グループでは、各発達段階のマーモセット大脳皮質を用いた網羅的遺伝子発現解析により、スパイン刈り込み制御に関与する候補分子として軸索誘導因子、ミクログリア関連分子などを見いだしている。平成28年度はこれまでに確立されていないマーモセット由来初代培養ミクログリアの調製法の確立を計画していた。すでに確立されている齧歯類での方法を踏襲する予定であったが、生後直後の脳内におけるミクログリアの挙動がマーモセットと齧歯類とでは大きく異なることが明らかになり、齧歯類での方法をそのまま応用することは不可能であると考えられた。また今後は発達段階におけるミクログリアを用いた検討も行う必要が出てきたため、磁気ビーズを用いたミクログリア単離法を現在検討している。磁気ビーズを用いたミクログリア単離法が確立されたら、各発達段階におけるミクログリアを取得し候補分子の発現変化の検証を行う。 さらに、候補分子として得られたミクログリア関連分子と、候補分子以外でもミクログリア機能に関与する分子として貪食マーカー、増殖マーカー、炎症性サイトカイン、M2タイプミクログリアのマーカーなどについて免疫組織化学的手法により発現変化と発現部位の解析を行うための予備検討を行った。市販されている抗体のうちマーモセットに適応のあるものは極めて少ないため、実際の解析を開始する前にその抗体がマーモセットサンプルでも染色可能かどうかを確かめる必要がある。平成28年度の検討により、貪食マーカーとして知られるCD68、増殖マーカーであるKi67、炎症サイトカインIL-1β、TNFα、MCP-1、M2タイプミクログリアマーカーであるCD206、IL-10などが染色可能であることが確認できた。現在は実際の脳切片を用いて染色を開始しており、平成29年度はその解析と評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトを含む霊長類では、新生児期及び小児期にシナプスの急速な増大が起こり、小児期にピークに達した後、児童期、青年期、成人となる過程でシナプスが刈り込まれる。近年、この「オーバーシュート型」シナプス形成のダイナミクスの異常が様々な精神疾患に関与していることが明らかになりつつある。従って、ヒトと同じ霊長類であるコモンマーモセットを用いてミクログリアを介した機能的神経回路形成の分子基盤を解明することは、精神疾患の病態解明への糸口を見いだすために非常に重要である。 平成28年度は、ミクログリア単離法について、計画した当初の方法では実施困難である可能性が高いために実験手法の変更が生じたものの、結果として当初の方法では得られなかった発達段階や成体からもミクログリアを単離できる手法が確立されつつあることは大きな進展である。これまでに特別研究員の所属する研究グループでは、マーモセット大脳皮質を用いた網羅的遺伝子発現解析を実施し、神経回路形成の分子基盤に関与する候補分子を多数見いだしてきたが、各発達段階におけるミクログリアを単離できれば、ミクログリアに発現するものだけに候補を絞ることができる上、ミクログリアの機能解析をすることも可能になる。また、ミクログリア関連分子の発現変化と発現部位の解析を行うため、免疫組織化学的手法を用いた予備的検討を実施し、平成29年度はすぐに実際の脳切片を用いた染色を開始しその解析と評価を行える状況にある。これらの理由から、現在までの進捗はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は磁気ビーズを用いたミクログリア単離法の確立を目指し、現在までに複数回検討を重ねた。マーモセットからも安定してミクログリアが得られるようになれば、平成29年度は各発達段階のマーモセット脳からミクログリアを取得し、これまでに得られている候補分子の発現変化の検証を行う。 さらに、候補分子として得られたミクログリア関連分子と、候補分子以外でもミクログリア機能に関与する分子として貪食マーカー、増殖マーカー、炎症性サイトカイン、M2タイプミクログリアのマーカーなどについて免疫組織化学的手法により発現変化と発現部位の解析を行う。平成28年度の予備的検討によりマーモセット脳組織でも染色可能な抗体の確認は終了しているため、平成29年度は実際のマーモセット脳組織サンプルを用いて、貪食マーカーとして知られるCD68、増殖マーカーであるKi67、炎症サイトカインIL-1β、TNFα、MCP-1、M2タイプミクログリアマーカーであるCD206、IL-10などの抗体を用いた免疫組織化学染色を実施し、その発現変化と発現部位の解析及び評価を行う。
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