研究課題
神経系における「痒み」の研究は2007年に脊髄で痒み受容体が同定されたことを端とする新しい研究分野である。他方、臨床的には痒みの治療薬として抗ヒスタミンおよび抗アレルギー薬が使用されているが、難治性の痒みには効果を発揮できないことが課題である。そこで本年度は、痒み伝達に寄与する受容体として、これまで進めてきたGタンパク共役型受容体を介した痒みの伝達系とは異なる新たな分子に着目し、脊髄における分子を介した伝達経路について解析を進めることとした。また、脊髄後角における分子として、痛み伝達に寄与する受容体に着目し、痒みの伝達にも寄与する受容体があるか否かということを観点に解析をした。というのは、痛みと痒みは大変類似した体性感覚として知られており、それらの違いがどの分子によるものかは未だ解明されていない点が多いからである。さらに、皮膚にて生じた痒みが中枢神経系に伝達させる最初の部位として、脊髄後角がその役割を果たしているためである。そこで、脊髄にて痛みの伝達に寄与する受容体の一つにグルタミン酸受容体が存在し、これらの受容体を脊髄特異的にノックダウンさせた動物を作製することで、これらの分子が欠損したことによる痒み伝達への影響について評価できる。そこで、グルタミン酸受容体を欠損させた動物に対して痒み状態に対する行動学的な解析を進めることとした。その結果、AMPA型グルタミン酸受容体のノックダウン動物において、痒み行動が減少することが認められたことから、AMPA型グルタミン酸が痒みの伝達に寄与する分子であることが示唆された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Archives of Oral Biology
巻: 79 ページ: 62-69
http://dx.doi.org/10.1016/j.archoralbio.2017.03.004