研究課題/領域番号 |
16J40248
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
松田(今井) 典子 明治大学, 農学部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | バキュロウイルス / 対応分析法 / カイコ核多角体病ウイルス / 構造タンパク質 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、野生型カイコ核多角体病ウイルス感染カイコとarif/polh変異ウイルス感染カイコの脳における遺伝子発現の比較を行った。各トランスクリプトームデータを用い、カイコ遺伝子モデルへのBowtieによるマッピングを行った。マッピングされたリード数から各遺伝子の発現量を計算し、対応分析法によってウイルス遺伝子およびウイルスの宿主であるカイコ遺伝子の発現量相関について解析した。解析を元に、発現パターンに類似性を示す遺伝子のネットワークを作製した結果、7345個の遺伝子から成る1つの大きなネットワークと、2個から百数十個の遺伝子から成る独立した836個のネットワークが得られた。そのうちの5つのグループにウイルス遺伝子が含まれており、2つのグループには宿主遺伝子も属していた。 一方、前年度明らかになったウイルスの構造タンパク質であるユビキチンの結合因子について解析するために、タグを融合させたユビキチンをバキュロウイルスの宿主培養細胞で発現させる系の構築を試みた。まず、FLAGタグおよびHAタグのN末端またはC末端への融合型タンパク質となるよう、昆虫細胞で発現させるためのプラスミドベクターにユビキチン遺伝子をサブクローニングした。トランスフェクション法によって培養細胞に導入したところ、抗タグ抗体を用いたウェスタンブロッティングによって発現が確認されたため、タグ融合型ユビキチン発現細胞にウイルスを感染させ、ウイルス粒子の精製を行った。各抗タグ抗体を用いてウイルス粒子のウェスタンブロッティング解析を行ったところ、予想される分子量のシグナルは検出されなかった。この原因として、細胞内に存在する多量の内在性のユビキチンに比して、外来遺伝子として発現させたタグ融合型ユビキチンの量が過少であるため、ウェスタン解析での検出限界を下回った可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、インフォマティクス解析と分子生物学・生化学的実験との両輪で研究を進めている。対応分析法を用いた遺伝子の発現量相関解析については、ほぼ計画通り、宿主遺伝子とウイルス遺伝子との発現パターンの類似性を検証する段階まで進んでいる。また、ウイルスの構造タンパク質の解析については、タグ融合型タンパク質のウイルス粒子への局在が見られず、インタクトな状態を反映できていないため、実験手法の検討が必要である。総括して評価し、区分のとおりとした。
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今後の研究の推進方策 |
対応分析法によって得られた遺伝子群の発現量パターンの類似性を確認するために、今年度得られたウイルス遺伝子と同じグループに属した宿主遺伝子や、ユビキチンシステムにおいて機能すると考えられる遺伝子と同じグループに属する遺伝子の発現量をqPCRによって定量する。また、ウイルス感染によって発現が抑えられる宿主遺伝子を抽出するため、対応分析法を用いて宿主遺伝子とウイルス遺伝子と逆の発現パターンを示すものの探索を行う。 構造タンパク質であるユビキチンのタグ融合型のウイルス粒子への局在が再現できていないため、系の構築を模索するとともに、インタクトなユビキチンの性状について解析を行う。具体的には、タグの種類を変える、発現プロモーターの種類を変えるなどし、タグ融合型ユビキチンの発現を再度試みる。また、ユビキチンがウイルス粒子において協調して機能する因子を解析するために、ユビキチンと結合する因子の探索をMSなどの手法を用いて行う。
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