研究実績の概要 |
現代社会において解決が求められる諸問題の中には, 通信網・交通網・電力網・VLSIなどネットワーク的構造を持つものが多くみられる.例えば, 地震・台風等による自然災害が多く発生する中,安定的なネットワーク制御・設計がより一層求められている.本研究では,ネットワーク制御・設計が求められる問題に対して,グラフを用いた離散最適化問題としてモデル化することで,問題が有する計算の複雑さの解析や効率的なアルゴリズムの開発を行うことを目的とする.さらに,その応用として,劣モジュラ構造のような離散構造を見出して手法を一般化することで,グラフ・ネットワーク問題にとどまらない一般の離散最適化問題への貢献を目指す. 今年度は,初年度に引き続き,ネットワーク構造の調査を行い,問題の計算困難性との関連について分析した.加えて,具体的にネットワーク構造を有するいくつかの最適化問題に対して,計算の複雑さの解析および効率的アルゴリズムの開発を行った.例えば,銀行間の決済を円滑に行うための最適な (決済) 順序を求める問題に対して,有向グラフを用いたモデル化を行い,問題のNP困難性や, 多項式時間で解けるためのいくつかの仮定を示した.また,初年度に引き続き,劣モジュラ構造や正モジュラ構造といったネットワーク問題に現れる重要な離散構造に関する調査を行った.その過程において,グラフの最小カット問題を一般化した離散最適化問題の一つである,正モジュラ関数最小化問題の計算の複雑さに関していくつかの結果を得た.
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