研究課題/領域番号 |
16K00002
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
山中 克久 岩手大学, 理工学部, 助教 (60508836)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アルゴリズム |
研究実績の概要 |
高速な列挙アルゴリズムをいくつか設計することができた.まず,数学的に重要な研究対象とされている阿弥陀籤(隣接互換への置換の分解)に対し,列挙アルゴリズムを設計した.このアルゴリズムは,阿弥陀籤に対する2進符号に基いている.各阿弥陀籤を一意に表現する2進符号に基づいた木構造を定義し,その木構造を探索することにより列挙を行うようなアルゴリズムを設計した.本研究では,同様の考え方に基づき,列挙アルゴリズムだけではなく,ランダム生成アルゴリズムを設計することにも成功している.この手法を他の対象に応用することができれば,列挙アルゴリズムだけでなく,ランダム生成アルゴリズムも設計できるようになるため今後の進展が期待できる研究成果と言える. 次に,グラフ中の2辺連結部分グラフを列挙するアルゴリズムを構築した.辺連結性はグラフ理論において基本かつ重要な概念であり,2辺連結部分グラフの列挙は重要な研究の1つである.また,避難路計画問題といった工学的な応用もあるため重要な課題の1つである. さらに,三角形分割を列挙に関する研究も行った.既存の辺制約付き三角形分割の列挙アルゴリズム[Tanigawa and Katoh, 2009]を実装し,計算機実験によりアルゴリズムの実性能の検証を行った.どの程度の入力に対してならば現実時間内に列挙が可能か観点で実験を行った.また,応用的な観点から重要な入力(2次元上の点集合)に対しても計算機実験を行った. その他,遷移問題に関しても研究成果を得た.最適な阿弥陀籤(隣接互換による置換のreduced分解)が2つ与えられたとき,一方に対して braid relation を適用することでもう一方へ遷移できることは既に知られているが,braid relation の適用回数が最小であるような遷移列を多項式時間で構成できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
列挙アルゴリズムの理論構築に関してのいくつかの結果が得られている.また,アルゴリズムの実性能に関して,計算機実験による検証を実施することができた.理論・実装の両側面から研究を推進できており,おおむね順調に進展していると言える. また,本研究では,列挙対象全体のグラフ構造に関しての知見を得るため,遷移問題に関しての研究を行っている.当該年度では遷移問題に関しても理論的な研究成果が得られた.列挙対象からなるグラフ構造を探るための知見が得られつつあり,こちらに関してもおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究成果をさらに推し進めていく形で研究を行う.列挙アルゴリズムの設計に関しては,理論・実装の両側面からアタックしていく.部分グラフの列挙アルゴリズムに関しては,アルゴリズムの理論構築を主に行う.三角形分割の列挙に関しては,実性能の評価に基づき,応用的な内容に進んで行く予定である. 列挙対象全体のグラフ構造を探るための遷移問題に関する研究では,当該年度において,肯定的な結果(多項式時間で解けるという結果)を得たが,否定的な結果(多項式時間では解けそうもないという結果)が得られるような問題設定があるかどうかを探る予定である.列挙対象からなるグラフ構造をどのように定義すると遷移問題が(多項式時間で解けるという意味で)簡単,または,困難になるのか,ということを調査していく予定である.
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