研究課題/領域番号 |
16K00004
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 健洋 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (40431548)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アルゴリズム / グラフ / 運搬経路問題 |
研究実績の概要 |
本年度は,主として「グラフ構造を用いたアルゴリズム」の開発に取り組んだ.特に後述するように,不満度を最小化する運搬経路問題について,バスの台数を定数に限定しグラフ構造を木とした場合に,完全近似スキーム(FPTAS)を開発することができた.完全近似スキームは,近似解の精度をアルゴリズムの利用者が指定することができるため,精度の意味では最良の近似アルゴリズムであると言える. 本研究では,まず,不満度を最小化する運搬経路問題について,その計算困難性を解析した.具体的には,バスの台数がたった2台であり,スターと呼ばれる木の中でも単純な構造を持つグラフでさえ,本問題が計算困難であることを証明した.これにより,本問題は非常に限定された場合でさえ,多項式時間アルゴリズムは設計できそうになく,本研究の目的の一つである近似アルゴリズムを開発することの妥当性が示されたことになる. 次に,一般の木に対して,本問題を解く擬多項式時間アルゴリズムを与えた.このアルゴリズムは,グラフの木構造に基づく動的計画法を用いており,擬多項式の計算時間がかかるものの最適解を求めることができる.この擬多項式時間アルゴリズムと既存の近似アルゴズム,さらに丸め手法を組み合わせて適用することで,完全近似スキームを構築することに成功した. この他にも,グラフ構造を用いたアルゴリズムの開発として,距離独立点集合問題に対する近似アルゴリズム,シュタイナー木遷移問題に対する多項式時間アルゴリズムなど,様々なアルゴリズムの開発に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木幅制限グラフを始めとした,より広いグラフクラスへの拡張は,まだ検討の余地が残っているものの,木に対する計算困難性の証明とアルゴリズム開発は,予定通り進めることができている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した完全近似スキームに関して,そのアルゴリズムと証明を洗練する.その上で,不満度を最小化する運搬経路問題について,その一般化を行っていく.特に,サービスを受ける顧客が指定された場合については,本年度の完全近似スキームが拡張可能であるか解析を進める.ただし,本年度の場合と異なり,既存の近似アルゴリズムが使用できないため,その検討も行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
パソコン等の物品購入が,予定よりも安価に済んだため.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度開発したアルゴリズムに関する研究成果発表もあり,次年度以降は旅費等の支出が増えることが見込まれる.次年度使用額と合わせて,有効に活用する予定である.
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