研究課題
前年度までに得た成果に基づき,本年度は特にパリティ関数を計算するしきい値回路が実現できるマージンに焦点を当て研究を行った.エネルギー計算量と呼ばれる指標はマージンと深いつながりがあり,そのエネルギー計算量が限定されている状況下で素子数が非常に多く必要になることを証明できれば,しきい値回路が実現できるマージンの限界を示せる.この事実に着目し研究を展開した.まず,エネルギー計算量が極端に小さい場合,パリティ関数を計算するしきい値回路の素子数が指数的に必要になることを示した.また,パリティ関数と類する性質を持つ別の複数の論理関数についても,同様の命題が成立することを示した.この結果の導出にあたっては,エネルギー計算量の小さいしきい値回路の表現能力に関する新しい数学的な構造を導入している.この結果を土台として,さらにエネルギー計算量が定数の場合についても,パリティ関数を計算する定数段数のしきい値回路の素子数が指数的となることを示した.この成果は,LA/EATCS発表論文賞を受賞している.本成果を利用することで,パリティ関数を計算するしきい値回路に対するマージンについて,既存の結果から自明に得られる上界よりも良い,新しい上界を与えることに成功した.また,前年度に引き続き閉路のあるニューラルネットワークに関しても研究を行い,各ニューロンが単純な処理を行う場合について,ニューラルネットワークの現在の状況から,過去の状況を計算機を用いて推論できるかという問題の計算困難性,計算容易性を明らかにした.
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Theoretical Computer Science
巻: 762 ページ: 25-40
10.1016/j.tcs.2018.08.026
IEICE TRANSACTIONS on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E101-A ページ: 1745-1337
10.1587/transfun.E101.A.1431