研究課題/領域番号 |
16K00007
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
中西 正樹 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (40324967)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 量子オートマトン / affineオートマトン / カウンタオートマトン |
研究実績の概要 |
量子オートマトンに非常に近い性質を持つaffineオートマトンについて,メモリとしてカウンタを持つ場合の能力を解析した.エラーなし計算のもとで,affineカウンタオートマトンが,従来の決定性カウンタオートマトンよりも優れた能力を持つことを証明した.具体的には,ε-遷移を許す1方向決定性1カウンタオートマトンや,ε-遷移を許さない1方向決定性kカウンタオートマトンでは認識できないが,ε-遷移を許さないaffine 1カウンタオートマトンでは認識できる言語が存在することを示した.さらに,2方向量子有限オートマトンでは計算できないと予想されているある種のプロミス付き問題について,ラスベガスaffine有限オートマトンで計算できることを示した.また,量子,affine,決定性の各有限オートマトンのモデルでは認識できないと予想されているある種の言語について,ε-遷移を許さない1方向affineカウンタオートマトンで片側有界誤りで認識できることを示した. これらの結果は,カウンタという特殊なメモリのみを持つ計算モデル,および,全くメモリを持たない計算モデルの能力の解析となっており,本研究のテーマである「メモリアクセスに制約のある量子計算機」の解析のための重要な知見を与えるものである.
その他にも,ガーベッジテープを持つ量子プッシュダウンオートマトンに関する結果を出す等,量子計算モデルに関する成果を挙げた.こちらも同様に,スタックと呼ばれる特殊なメモリを持つモデルを対象にした研究である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
毎年順調に論文を発表しており,量子計算モデルの理論的解析からそのシミュレーションまで幅広い内容について,計画通りに成果を挙げている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き,量子計算モデルの理論的解析を続けつつ,発見的手法による量子アルゴリズムの開発や,シミュレーションによる性能評価を行う予定である.また,量子オートマトンに非常に近い性質を持つaffineオートマトンについても解析を行い,それを通して量子オートマトンの能力を特徴づけることを考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 今年度配分額に関しては,おおむね予定通り執行したが,前年度からの繰り越しが多くあったため,次年度使用額が生じた.出張の計画の変更や,PCの購入計画の変更が主な要因である. (使用計画) FPGAを用いた量子コンピュータシミュレータ,およびGPGPUを用いた量子コンピュータシミュレータの両面からシミュレータの開発を行っている.予定ではGPGPUを用いた量子コンピュータシミュレータを中心として今後の研究を行うため,高性能なGPGPUを搭載した計算機の購入を予定している.また,成果発表や情報収集のための旅費も合わせて計上する予定である.
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