研究課題/領域番号 |
16K00012
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
小川 朋宏 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (00323527)
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研究分担者 |
長岡 浩司 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80192235)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 情報スペクトル / ダイバージェンス / レニーダイバージェンス / 通信路符号化定理 / 情報幾何 / 双対接続 / エンタングルメント / 量子統計力学 |
研究実績の概要 |
情報スペクトル的方法は,通信路符号化をはじめとする種々の情報理論的問題について,定常性や無記憶性などの確率論的条件を一切仮定しない一般的な状況で,最も簡明で強力な方法論を提供する.本研究では「プラス型情報スペクトル量」を中心にして,古典系および量子系における情報スペクトル的方法について簡明な議論を提供することを目的とする. 平成30年度においては以下の研究を行った.
1.古典・量子通信路符号化定理の情報スペクトル的一般公式について,プラス型情報スペクトル量に基づき証明の簡略化を行った.証明の主要部分である多値仮説検定を単純仮説検定に帰着させる議論において,サンドイッチ型量子Renyiダイバージェンスの量子操作に関する単調性を利用することで,数学的技巧に頼らない見通しの良い簡明化を行っている.また,この内容に基づいて量子情報スペクトル理論に関していくつかの招待講演を行った.
2.情報スペクトル量で記述される符号化定理を,定常無記憶性やマルコフ性の元で通常のエントロピー的情報量を用いた符号化定理に結びつける研究も重要である.古典および量子通信路において,通信路容量より大きな符号化レートを用いて通信を行うと正解確率がゼロに収束することが知られており,収束の指数スピードは強逆指数と呼ばれる.昨年度に本研究で決定した強逆指数に関して,サンドイッチ型量子Renyiダイバージェンスのmin-max表現に基づく量子相互情報量の性質を研究し,量子通信路の並列に関する加法性を導いた.これに基づき,タイプ一定符号に関する強逆指数を決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多値仮説検定を単純仮説検定に帰着させる議論において,数学的技巧に頼らない見通しの良い証明方法を導いている.また,サンドイッチ型量子Renyiダイバージェンスに基づく量子相互情報量の加法性(arXiv:1811.10599)等,採択時の研究計画の想定を超える成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
上記で述べた結果を含め,本研究で得られた成果について,学会参加,論文投稿等を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的は,(1)「プラス型情報スペクトル量」を中心にして古典および量子情報スペクトル理論の再定式化を行い,(2) 情報スペクトル的一般定理から量子確率論的制約下での符号化定理の導出を行うものである.研究目的(2)において,当初の想定以上の新たな結果が得られたため(arXiv:1811.10599),学会参加,論文投稿等のため延長を必要とする.
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