研究課題
本研究の初期に、アルゴリズムの最少使用メモリ領域量推定に利便性のある作業仮説「線形メモリ領域仮説」を提案した。この仮説の真偽に関連し、2018年度ではメモリ領域量が限定された計算モデル上でのアルゴリズムの振る舞いを理論的に追求した。そうした計算モデルの一つにオートマトンが有り、これまでに資源や動作を限定した様々な亜種が考案され研究されている。この計算モデル上でのアルゴリズムを分析・比較し幾つかの新たな発見をした。これらの研究成果は、4つの国際会議での口頭発表とヨーロッパの出版社による国際会議論文集で一般に公開されている。(1) 入力パラメータに依存する「パラメタ付き決定問題」を考察し、内部状態がパラメタ値を基準とした多項式個に限定された非決定性オートマトンを、多項式個の内部状態を有し更に計算木の幅が制限された交代性オートマトンで模倣が可能な場合と、線形メモリ領域仮説が論理的に同値であることを証明した。これは、線形メモリ領域仮説とメモリを持たない計算モデルであるオートマトンとの相互関連を初めて具体的に示した例である。(2) 上述の内部状態数が入力パラメータの多項式程度であるオートマトンの研究を、各種の相違なるオートマトンに拡張し、これらオートマトンが有する固有の性質を調べ、計算能力の相対的な比較を行った。(3) オートマトンを一般化した計算モデルに「トポロジカルオートマトン」が有る。これまでに幾つかの異なる定義が与えられ研究成果も得られているが、本研究が目標とするアルゴリズム分析の観点からは不十分であった。本研究ではトポロジカルオートマトンを再定義し、メモリ領域限定計算の能力の詳細な分析と、異なるトポロジーが齎す計算能力の比較を行った。線形メモリ領域仮説とオートマトンとの関連性の研究はこれまでにない新たな取り組みであり、本研究の成果は今後の研究の新たな指針となると期待できる。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
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