最終年度は、前年度までに得られたセキュア量子ネットワーク符号プロトコルでカバーしきれなかった点を補う新たなプロトコルの開発に取り組んだ。前年度までに得られたセキュア量子ネットワーク符号プロトコルには大きく分けて2つの点で、改善の余地があった。 前年度の手法の1つ目の問題点は、プロトコルが保証するのは秘匿性のみであり、盗聴者が攻撃を行った場合には、通常量子状態は破壊されてしまい、受信ノードは正常な受信ができないという点である。この点を改善することを目指して、今年度は、攻撃を受けても入力量子状態の復元が受信ノードで可能であるようなプロトコルの構築を目指した。結果として、N個の出力ノードと1つの受信ノードをもち、さらにネットワークの形状に一定の制限を置いた場合には、攻撃を受けた場合にも受信ノードにおいて入力量子状態の復元ができることを示した。 前年度の手法の2つ目の問題点は、プロトコルが通信路への攻撃しか想定をしていない点である。実際の量子ネットワークにおいては、量子通信路を盗聴されることより、むしろノードを乗っ取られる方が、より起きやすい攻撃だと考えられる。そこで、本年度は、前年度のプロトコルに対する、ノードを乗っ取られた場合の安全性についての解析を行った。結果として、2個の送信ノード、1個の受信ノード、2個の中間ノードからなる非常に簡単なネットワークの場合には、中間ノードを乗っ取られたとしても安全性が保障されることを証明した。
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