研究課題/領域番号 |
16K00017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮崎 修一 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (00303884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 安定マッチング / アルゴリズム / 計算複雑性 / ゲーム理論 / 耐戦略性 |
研究実績の概要 |
入力として例えば男性と女性という2つのグループがあり、各人は異性を好きな順に順序付けした希望リストを持っている。この入力から「安定性」と呼ばれる性質を満たすマッチング(男女のペア集合)を求めるのが安定マッチング問題である。本問題は、病院への研修医配属や大学での研究室配属など、社会で広く利用されている。その際、出力となるマッチングに求められる細かな要請は、一般には応用ごとに異なり、それらに応じたモデルを考えることが出来る。本研究課題は、主に実用性を考慮しながら安定マッチング問題の様々なモデルを提案し、その計算困難性の解析やアルゴリズム開発を行うことである。本年度は以下の結果を得た。 安定マッチング問題に対するスタンダードなアルゴリズムである男性プロポーズ型Gale-Shapleyアルゴリズム(以下「GS」と書く)を使った際、男性は希望リストを偽っても得をすることがないという耐戦略性を備えているが、女性はリストを偽ることにより得をする可能性がある。この際、指定された女性の最適戦略を多項式時間で求められるということは、以前から分かっていた。GSは男性側に耐戦略性を持っているため、提出された男性の希望リストは真のリストであると考えてよいのに対し、女性は戦略操作が可能なため、女性の希望リストは必ずしも真の希望を反映しているとは限らない。本研究では、このような背景を考慮して問題を一般化し、この一般化された問題において女性の戦略可能性を判定する問題が多項式時間(男性数nに対してnの4乗のオーダー)で解けることを示した。本結果は査読付き国際会議SWAT 2016に採録され発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、本年度は「最大安定マッチングを求めるための近似アルゴリズム」および「3次元安定マッチング問題」を取り扱う予定であった。前者は論文として発表するまでの結果を得られていないものの、研究は進めており一定の知見を得ている。後者については、本年度は手を付けることは出来なかった。一方「研究実績の概要」で述べた通り、研究計画には書いていなかった耐戦略性に関するテーマを進め、査読付き国際会議にて発表するという成果を得た。 以上を総合して、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「最大安定マッチング」問題については、上述の通り本年度の研究で進捗があったので、次年度以降も現在の方針で研究を続ける。また、本年度取り組めなかった「3次元安定マッチング問題」については、次年度の早いうちに着手したいと考えている。ただし、今年度の研究においてゲーム理論的アプローチに関する知見を得たので、今後は耐戦略性などに関わる研究テーマにも積極的に関わっていきたい。こちらで良いテーマが見つかった場合には、「3次元安定マッチング問題」を保留し、ゲーム理論的研究を優先させることも考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた大きな理由は2つある。1つは初年度に購入を予定していたノートPCを購入しなかったことである。これは、研究の進捗状況及び研究環境を鑑みて、早急に購入する必要がないと判断し、次年度以降に繰り越すことにしたためである。もう1つは、年に1~2度の割合で予定していた海外出張に行かなかったことである。これは、本研究課題に関係の深い「MATCH-UP」という国際ワークショップで年度内での出張を予想していたが、2017年4月に開催されることになり、次年度での出張となったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度分として請求した助成金は、当初計画通り使用する予定である。すなわち、物品費は主にアルゴリズム関連の書籍に、旅費は年1~2回の海外出張と4回程度の国内出張に充てる。さらに、謝金は文献調査補助に、その他経費は国際会議参加費や論文投稿料に充てる。2016年度の未使用分の主な使途については、物品費は当初購入予定であったノートPCに、海外旅費は2017年4月に開催される「MATCH-UP 2017」への参加のために充てる。
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