研究実績の概要 |
n変数の関数f(x1,x2,...,xn)に対して,素子数nの3乗の回路を設計したとする.はたして,良い回路が設計できたかどうかは,どのように評価すれば良いだろうか.たとえば,任意の微小な定数ε>0に対して,素子数nの(3-ε)乗の如何なる回路でも関数fは計算できないといった最適性が,理論的に証明できればいいのだが,その証明は非常に難しいことが知られている.さらに言えば,任意の有理数r>1に対して,素子数nのr乗の回路で計算できるが,素子数nの(rーε)乗の回路では計算できないという具体的な関数fが実際に存在するか否かさえも分かっていないのである.本研究の第一の目的は,問題を解くのに必要となる計算時間や記憶領域量などの計算資源量に基づく計算複雑性クラスの間の包含関係や,クラス間の階層性を明らかにすることである.そして,クラス間に存在する真に難しい関数を人工的に作成し,システム評価に役立てる. 2017年度は,連結されたセル上に,単語を連結していく問題の計算複雑性を考察した.その結果,平面3充足可能性問題を本問題に多項式時間で還元することで,多項式時間では解けないことを示唆するNP困難問題であることが証明できた.本結果は,電子情報通信学会論文誌D-Iに2017年12月に掲載された.また,平面上の多角形に対する可視性問題の一つのNP困難性を証明した.この結果は,IEICE Transactions on Information and Systemsに2017年7月に掲載された.
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