研究実績の概要 |
n変数の関数f(x1,x2,...,xn)に対して,素子数nの3乗の回路を設計したとする.はたして,良い回路が設計できたかどうかは,どのように評価すれば良いだろうか.たとえば,任意の微小な定数ε>0に対して,素子数nの(3-ε)乗の如何なる回路でも関数fは計算できないといった最適性が,理論的に証明できればいいのだが,その証明は非常に難しいことが知られている.さらに言えば,任意の有理数r>1に対して,素子数nのr乗の回路で計算できるが,素子数nの(rーε)乗の回路では計算できないという具体的な関数fが実際に存在するか否かさえも分かっていないのである.本研究の目的は,問題を解くのに必要となる計算時間や記憶領域量などの計算資源量に基づく計算複雑性クラス間の関係や性質を明らかにすることである. 2021年度は,幾つかの組合せ問題について,それらの計算複雑性を調査した.その結果,Five Cells問題やTilepaint問題などのNP困難性を証明できた.それらの結果は,電子情報通信学会英文論文誌に採録された.また,conflict-freeと呼ばれる可視性条件を考慮した多色警備員配置問題の計算複雑さを解明できた.この結果は,インドネシアの国立大学Universitas Jemberでオンライン開催された国際会議The 16th International Conference and Workshops on Algorithms and Computationで口頭発表し,論文はSpringer-Verlag社のLecture Notes in Computer Scienceに採録された. 2016~2020年度はNP困難性の証明に関して電子情報通信学会英文論文誌に8件,情報処理学会英文論文誌に1件の論文が採録された.また,国際会議で4件の論文を発表した.
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