文法推論アルゴリズムの応用先としてゲームの着手手順に注目し,適用可能性を探った.その結果,着手手順の分析により強いアルゴリズムの構築の基礎とできることを明らかにした.今年度の研究では特に多人数不完全情報ゲームに対してその着手の分析を行い,勝率に与える影響を明らかにした.対象としたゲームはカードゲームであり,多人数不完全情報ゲームの中でもプレイヤーが明らかになっていない二つのチームに分かれて対戦を行う「お邪魔者」というゲームに注目して研究を行った.このゲームはカードゲームであるが,人狼のように敵役プレイヤーが正体を隠しながら妨害を行うゲームである.このゲームにおいて妨害を開始するタイミングは勝利条件成立に大きな影響を与える.本研究では妨害開始のタイミング,妨害の種類を変化させた場合の勝率の違いを実験的に示し,強いプレイヤーアルゴリズムの基礎となる性質を明らかにした.また,同じゲームにおいては対戦するチームの人数は等しくなく小数側のチームが勝率的に不利である,その不利のバランスをとるために得点の仕組みに工夫がなされておりゲーム性を高めている.多人数不完全情報ゲームでは,ゲームの勝敗が単純に各プレイヤーごとの勝敗を判定するのみでなく,順位や得点で優劣を決める場合が多くある.これに対して本研究ではプレイヤーの役割や参加人数による状況の違いごとに公平な勝率を求め,基本的なプレイヤーアルゴリズムがその勝率とどの程度違うか実験的に求めた.その結果,公平な得点を得るための理想的な勝率とは傾向が違ったが,得られる得点のばらつきに大きな違いが無いことが明らかとなった.このような性質も文法推論アルゴリズムを用いてプレイヤーの特徴を表す際の一助となる.
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