研究課題/領域番号 |
16K00024
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
今井 桂子 中央大学, 理工学部, 教授 (70203289)
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研究分担者 |
森口 昌樹 中央大学, 理工学部, 准教授 (10525893)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 計算幾何学 / 計算位相幾何学 / ラベル配置問題 / 経路探索 / 警備員巡視路問題 |
研究実績の概要 |
本研究では,これまでに計算幾何学の分野で開発されてきた既存の幾何アルゴリズムを,動的環境に対応できるようにすること,また,データ数が非常に多い場合にも適用可能になるように拡張することを目的としている.それと同時に,幾何情報処理のための位相幾何アルゴリズムの開発も目的としている. 計算幾何学の地理情報システムへの応用として,地図に注記(ラベルと呼ぶ)を配置するラベル配置問題が挙げられる.どのような地図に,どのような対象に対してラベルを配置するかによってさまざまな問題が考えられる.本研究では,配置したラベルの見やすさを表す目的関数を設定し,道路網に道路名を表すラベルを重なることなく配置する問題,平面上に配置されるラベルの重なりを許した場合に一つの点に重なるラベル数の最大値を最小にする問題などを研究してきた.この研究に関しては一部を学術論文誌に投稿した.また,昨年度に引き続き,東京のような複雑な地下鉄の路線図を駅名を表すラベルと共に自動描画する研究も行っている. 動的な環境における幾何情報の処理に関しては,昨年に引き続き,自律移動ロボットの経路計画に関する研究を,ロボティックス分野における経路追従などとの融合を見据えて研究を行ってきた.また,多角形領域内を動き回る監視員によって,領域をくまなく見て回る最短な巡回路を求める問題は一般にNP困難と言われる難しい問題であるが,多項式時間で求められる特殊な場合がどのようなものかについての研究を行った.これらの研究のうち,研究成果がまとまった部分は国内研究集会などで公表を行ってきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種のラベル配置問題において,平面上に交差を許してラベルを配置する問題において,1つの点に重なるラベルの最大数を最小化する問題に関して既に開発したアルゴリズムの改良を行ってきた.近似比の改善などもでき,一定の成果が得られたので,学術論文としてまとめ,投稿中である.道路網に道路名を埋め込む問題に関しては,新しい手法を開発してはいるが,もう少し改良をする必要があると考えており,引き続き研究を進める予定である.ラベル付きの大規模な路線図の自動生成に関しては,追加実験で得られた結果を加えて,学術論文として公表する予定である. 自律移動ロボットの経路計画に関する研究は,障害物や視覚センサーで得られる情報は幾何情報であるので,これまでの研究成果や既存の結果を利用して,安全な経路の生成を試みている.指定された経路を追従するロボット制御に関しても研究を行い,学会発表により成果を公表している. 多角形領域の内部をくまなく見て回る,警備員巡視路問題においては最短経路を求めることはNP困難であり,難しい問題の1つであるが,領域や障害物に制約を付けることによって多項式時間で解が得られる可能性がある.それがどのような場合であるかを詳細に検討し,実際に多項式時間の解法と実現した.この成果は学会で発表を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
ラベル配置問題において,平面上に交差を許してラベルを配置する状況における問題である,1つの点に重なるラベルの最大数を最小化する問題において,これまでに得られた成果を学術論文として投稿する準備を進める.また,ラベル付き大規模路線図の自動生成に関しては,必要な追加実験などを行いながら,これまでの研究で得られた結果を学術論文としてまとめる作業をし,公表に向けた準備をする予定である.道路網に道路名を埋め込んで表示する問題に関しては,NP困難な問題であるので,近似保障のあるアルゴリズムの開発や実データでの有効性を示すことを目標に研究を進める. また,動的な環境として,自律移動ロボットの経路計画に関する研究を本年度から開始したところであるので,ロボティックスの分野への計算幾何学の応用を見据えて,研究を進めて行く. 3次元形状処理に関する研究では,与えられた視線を基に形状を構成する手法を開発してきたので,その性質を明らかにし,適用範囲を広げていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に予定していた学会発表が新型コロナウイルス感染拡大により,中止になったため,出張旅費の支出が無かったことにより,次年度の使用額が発生することになった. 2019年度が最終年度であったが,期間延長をし,次年度使用額は,2020年度に計算機購入と学会発表のための旅費に使用する予定である.
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