研究課題/領域番号 |
16K00025
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
入山 聖史 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 講師 (10385528)
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研究分担者 |
田畑 耕治 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 講師 (30453814)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量子コンピュータ / 光合成過程 / 開放系 |
研究実績の概要 |
光合成過程の数理的研究を行い,計算の困難さにより無視されている外界との相互作用パラメータについて厳密に計算を行った.(1)高次元でのラプラス変換の必要性と,(2)デコヒーレンスと散逸のパラメータ比によるエネルギー伝送効率の収束点の違いが挙げられる.(1)についてはまず,5次方程式について解の存在を仮定することで近似的に因数分解を行い,これを達成した.(2)については,デコヒーレンスをr,散逸をRとした場合,先行研究ではR=0としてあるため,本研究課題ではR/r=Gとおき,Gが0でない場合を考え,このとき,0<G<1, G=1, G>1でそれぞれ異なる力学となるため,それぞれの場合において再計算を行った.同時に,1パラメータ半群を用いて量子計算過程の記述と完全正性の議論を行った.(3)増幅過程のパラメータの物理的な解釈と,(4)量子複製不可能定理との関連性について詳細に検討し,(3)について,先行研究で求められているパラメータ条件は数学的に与えられたものであり,現在その物理的な意味や実現可能性についての議論を進めた.(4)について,現在行われている研究では,量子計算の結果の状態を2つ用意し,それらの合成系における時間変化が議論されているが,完全に同一な状態は数学的に与えられているため,現実的にどのように用意するかの議論はまだ行われてない.本研究課題ではまず数学的な議論を深めることに集中し,余裕がある場合,同一な状態を用意しないときの達成条件について議論した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題1については,(1)外界との相互作用のパラメータを考慮したモデルでの解析が進み,先行研究と比較して,より詳細な数理モデルの構築と光合成過程における情報伝送過程の効率向上が,どの要因によって引き起こされているかが明らかにされた.(2)光合成モデルのエントロピー解析についてイジングモデルを用いた数理モデルでも検討し,開放系におけるエントロピー減少の条件を導出することに成功した. 研究課題2については,(3)量子計算過程における増幅問題を1パラメータ半群表現を用いて解析し,どのような力学的条件で増幅が可能であるかを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は主に課題2に取り組む.断熱過程を用いた量子アニーリングについては,肯定や否定に様々な議論があるが,根本的に古典のアニーリングにおける誤り確率を超えてはいない.それに対し,課題1で求められた増幅過程と開放系における量子計算過程を組み合わせ,誤り確率を減少させる量子アルゴリズムを構成する.これにより,新しい量子アルゴリズムのスキームが構成され,課題2が達成される.構成における困難な点は,(4)外部との相関による内部のエンタングルメントの破壊が,どのように誤り確率に影響しているかの解明,(5) Adiavatic条件を緩和した場合の時間計算量の変化が挙げられる.(4)については,課題1で導入したパラメータGの変化による誤り確率の変化が解析的に導出出来るか考え,出来ない場合は実際に数値計算で導出し,相関を調べる.(5)については,系のハミルトニアンの時間変化⊿tの取り方を変えることでの対応を試みるが,不可能な場合はハミルトニアンを時間に対して不連続なものに分解し,幾つかの合成系での記述を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の海外出張の航空券の支出が予定より少なかったため,次年度使用額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
海外出張及び海外からの研究者の招聘に使用する.
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