研究課題/領域番号 |
16K00028
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
久野 誉人 筑波大学, システム情報系, 教授 (00205113)
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研究分担者 |
吉瀬 章子 筑波大学, システム情報系, 教授 (50234472)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 数理最適化 / 大域的最適化 / 非凸計画問題 / アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本年度における最大の研究成果は,凸多面体上で凸関数を最大化する最適化問題に対して既存の常識を打ち破る新たな厳密算法を構築し,その収束性を理論的に証明できたことである.凸関数の最小化とは異なり,最大化の問題には複数の局所最適解が存在し,その中から大域的に最適な解を見つけ出すことは難しく,計算科学ではNP困難な問題として知られている.これまでポピュラーに用いられてきた厳密算法は,実行可能集合を単体などの単純な同一形状の多面体に分割し,そのそれぞれで目的関数を線形近似して最大値を求め,最大値の中で最も大きな値を与える点ωを含む分割多面体をさらにωを中心に分割し,近似精度と暫定解の改善を繰り返す分枝限定法である.この多面体の分割規則はω規則とよばれ,これを用いたときの分枝限定法の収束性は研究代表者らによって2016年に証明されている.本年度は,目的関数の線形近似を分割多面体上ではなく,もとの実行可能集合上で最大化することによって暫定解の大幅な改善を実現した.その結果,分割点ωが分割すべき多面体には必ずしも含まれないため,新たな分割規則の必要に迫られて拡張ω分割の考案にいたり,この規則を用いた算法の大域的最適解への収束性を証明することに成功した.計算機上に実装して通常のω分割を用いた場合との比較実験を行ったところ,拡張ω分割規則ははるかに高性能であることが明らかになった.これらの結果を論文にまとめ,Journal of Global Optimization に投稿したところ,細かな改訂ののちに採択され,現在は電子版に掲載されている.このほか,算法の中でサブルーチンとして用いられる線形計画問題に対する単体法の反復回数に関する研究も実施し,その成果も論文にまとめて現在投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的関数が必ずしも凸や凹とは限らず,単調性のみを満たす単調最適化の特殊ケースとして単体上での単調関数の最適化に関する研究を続けている.しかし,多項式時間近似スキームの算法を構築後,計算機上に実装し,計算実験を行ったものの,経験的効率が想定よりもだいぶ下回り,期待した成果が得られていない.ベンチマークの見直しや,効率改善のためのサブルーチンを考案する必要がある考えている.
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今後の研究の推進方策 |
凸関数の最小化や最大化を一般化した問題として2つの凸関数の差を最適化するDC(difference of two convex functions)最適化問題が機械学習などの分野で最近注目されている.現段階では,2つの凸関数のうちの一方を線形近似して凸関数の最小化を行い,その最小点で再び線形近似を行うことを繰り返す局所解法が広く用いられているが,その収束先はもとの問題の局所最適解であることすら保証されていない.大域的最適解を求める厳密算法としては,1990年代にTuyらが提案した矩形的分枝限定法などが知られているだけで,体系的な計算実験が行われた形跡はない.凸関数の最大化に関しては,矩形的分枝限定法と並んで単体的分枝限定法がポピュラーな厳密算法として知られており,本年度もその研究を行っているが,過去にDC最適化に対して単体的分枝限定法の提案がなされたことは少なくとも研究代表者には未聞である.そこで今後は,DC最適化の厳密算法としての単体的分枝限定法を中心に研究を推進してゆく予定である.すでにω分割規則に基づく算法の骨子はできあがっており,予備的な計算実験も進めており,良好な研究成果を生みつつある.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:2018年1月にamazon経由でビデオカードの発注を行ったが,仮想通貨の発掘目的の購入で品薄となり,数度の納品遅延の通知後,結局,受注がキャンセルされたため. 使用計画:ビデオカードの仕様を変更して再発注する.
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