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2018 年度 実施状況報告書

数理計画法に基づくオンライン最適化に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K00033
研究機関信州大学

研究代表者

藤原 洋志  信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (80434893)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードオンライン最適化 / アルゴリズム / 数理工学 / 情報基礎 / 応用数学
研究実績の概要

(1) ビンパッキング問題は、順次到着するアイテムを、そのつどビンに詰めていき、なるべく少ない数のビンに収めることを目的とするオンライン最適化問題である。ビンパッキング問題に対するオンラインアルゴリズムの性能評価は、通常、漸近競合比という尺度によって行われる。そのアイデアはシンプルだが、漸近競合比の値を厳密に求めるのは容易ではない。実際、漸近競合比が分かっていないオンラインアルゴリズムも数多く存在する。本研究では、ビンパッキング問題の種々の設定を精査し、漸近競合比の計算を簡単化できるケースがないか考察した。結果として、アイテムサイズの種類およびアルゴリズムがある条件を満たす場合に適用可能な、漸近競合比の簡便な導出法を構築した。

(2) ナップサック問題は、サイズと価値をもつアイテム集合が与えられ、サイズ和の上限を満たしつつ、価値和を最大化する問題である。IwamaとTaketomiにより2002年に提案された除去可能オンラインナップサック問題は、ナップサック問題に次の2つのルールを追加したオンライン最適化問題である。(A) アイテムは1つ1つ順次到着し、到着ごとにナップサックに詰めるか、あるいは詰めないで捨てるか決定しなければならない。(B) すでにナップサックに詰められている任意のアイテムを捨てることができる。この問題に対するアルゴリズムは、競合比という尺度により評価される。IwamaとTaketomiの論文では、各アイテムのサイズと価値がそれぞれすべて等しい場合に、競合比 1.618 のアルゴリズムが設計でき、しかも最良であることが証明されている。本研究では、各アイテムのサイズと価値がそれぞれすべて等しく、しかも整数値である場合に対する競合比の下界を導出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1) アイテムが一度にすべて与えられるビンパッキング問題において、そのアイテムサイズが有限種類に限定されるとき、これを解く多項式時間アルゴリズムが存在するかどうかは永年の未解決問題であった。2014年になって、この問題はGoemansとRothvossにより肯定的に解決された。では、そのオンライン最適化版、つまりアイテムが順次到着し、そのつどどこに詰めるか決定しなければならない場合はどうか、というのが自然な問いである。すなわち、これを解くオンラインアルゴリズムについて、何か良い性質を見出せないだろうか。本研究では、オンラインアルゴリズム全般に共通する知見は今のところ得られていないが、ある条件のもと、オンラインアルゴリズムの漸近競合比を計算する簡便法の設計に成功した。

(2) 本研究では、除去可能オンラインナップサック問題において、各アイテムのサイズと価値がそれぞれすべて等しくしかも整数値である場合に対し、競合比の下界を得た。導出のアイデアは、IwamaとTaketomiの2002年の論文に基づく。当初、競合比の下界の値は、ナップサックサイズに関して単調増加であると予想していた。しかしながら、得られた下界は、ナップサックサイズに関して単調増加でも単調減少でもなかった。この性質は直感に反するが、競合比によるアルゴリズム性能評価の妥当性に疑問を投げかける結果といっていい。また、得られた下界の値が上界と一致するかどうかも調べた。ナップサックサイズが 11 以下の設定では確実に一致することが分かった。ナップサックサイズが 11を超える場合についても、おそらく下界と上界は一致するのではないかと予想している。

今後の研究の推進方策

(1) まずは、本研究で設計した簡便法をただちに適用可能な設定のなかに、アイテムサイズを2種類に限定したケースがある。これは問題設定の単純さにもかかわらず、最適なオンラインアルゴリズムが見つかっていない。設計した簡便法をもとにパラメータつきの数理計画問題を定式化し、最適なオンラインアルゴリズムの開発を行う。具体的には、数理計画ソルバを繰り返し呼び出すことにより、より良い漸近競合比を達成するオンラインアルゴリズムを探索する。さらに数理計画法の観点から、漸近競合比を計算する簡便法の再検討を行う。手がかりとして、ビンパッキング問題を解くオンラインアルゴリズムの漸近競合比を求める従来手法に、アイテムに「重み」を仮定する手法がある。これは、ある定式化の上での「双対解」を表している。我々の簡便法とこの手法との関連性を明らかにする。

(2) まずは、すでに求めた競合比下界と一致する競合比を達成するアルゴリズムを設計する。ベースとなるアイデアは、IwamaとTaketomiの2002年の論文のアルゴリズムである。ただし、本研究で導出した競合比下界は、ナップサックサイズに関して単調ではないため、そのまま適用して競合比を保証するのは難しいと考える。ナップサックサイズに応じてパラメータをとり直すことにより、競合比が下界値と一致するように設計する。さらに、競合比の保証をするためのすべてのナップサックの状態を列挙するプログラムを作成する。列挙プログラムの基礎部分はすでに実装済みである。これをもとにして、「サイズ=価値」の制限を外した拡張設定に対するアルゴリズムの設計を行う。

次年度使用額が生じた理由

・当初計画では、除去可能オンラインナップサック問題に関する研究発表のための海外出張を平成30年度に実施予定であったが、研究の進捗状況により、平成31年度に実施することとしたため、次年度使用額が生じた。
(使用計画)
・次年度使用額は、平成31年度請求額と合わせて外国旅費として使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 学会発表 (7件)

  • [学会発表] ファクターオラクルの拡張と文字列照合問題への応用2019

    • 著者名/発表者名
      大井 恒平, 和智 吉弘, 山本 博章, 藤原 洋志
    • 学会等名
      冬のLAシンポジウム
  • [学会発表] 定数種類のアイテムに対するオンラインビンパッキングアルゴリズム2019

    • 著者名/発表者名
      鰐川 友太, 藤原 洋志, 山本 博章
    • 学会等名
      冬のLAシンポジウム
  • [学会発表] 整数アイテムサイズに対する除去可能オンラインナップサックアルゴリズム2019

    • 著者名/発表者名
      判治 奏帆, 藤原 洋志, 山本 博章
    • 学会等名
      冬のLAシンポジウム
  • [学会発表] 並列処理に向けた検索可能暗号の改良2018

    • 著者名/発表者名
      三好 竜司, 山本 博章, 藤原 洋志
    • 学会等名
      電子情報通信学会信越支部大会
  • [学会発表] ファクターオラクルの拡張と実験的評価2018

    • 著者名/発表者名
      大井 恒平, 山本 博章, 藤原 洋志
    • 学会等名
      第17回情報科学技術フォーラム
  • [学会発表] 2個詰めビンパッキング問題の最適解と列挙2018

    • 著者名/発表者名
      所澤 亮太, 土屋 寿樹, 藤原 洋志, 山本 博章
    • 学会等名
      夏のLAシンポジウム
  • [学会発表] Threat-Based Strategies for One-Way Trading with only the Maximum Fluctuation Ratio Available2018

    • 著者名/発表者名
      藤原 洋志
    • 学会等名
      列挙アルゴリズムセミナー

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公開日: 2019-12-27  

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