研究課題/領域番号 |
16K00036
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
白石 博 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (90454024)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2021-03-31
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キーワード | 保険数理 / 破産理論 / Levy過程 / Hawkes過程 / INAR過程 / 複合ポアソン過程 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度行った伝統的なモデルであるCramer-Lundberg Modelに対する配当問題を、拡張したモデルに対して考えるための準備として、先行文献の調査に主に時間を配分した。具体的には、1)Levy過程についての調査、2)Hawkes過程についての調査 を行った。
1)について:Levy過程は、Cramer-Lundberg Modelのような複合ポアソン過程やブラウン運動などの連続型確率過程を含む広いクラスであり近年盛んに研究されている。Levy過程についての一般論は、Sato(1999)などで確認した。また、保険数理に関する内容は、Kyprianou(2014)、Asmussen and Albrecher(2010)などが有用であることが分かった。ただし、本研究の主題である統計的推測論は議論されておらず、本研究の価値があることも判明した。また、本研究の目的である最適配当境界は、対象となる確率過程の(ある関数の)期待値を目的関数とし、その目的関数を最大化することで得られる。Levy過程を対象とした結果については、Yin,Yuen and Shen(2015)がその目的関数の凸性を示していることが分かった。 この結果を用いれば、Levy過程を離散観測した場合の目的関数の推定量が漸近的に凸性を持つことを示すことができ。その最適化解の漸近分布が導出できるものと期待している。
2)同時に、Cramer-Lundberg Modelでは、保険金請求頻度が(定常)ポアソン過程に従うと仮定しているが、この部分を拡張するべく、ポアソン過程よりも広いクラスであるHawkes過程についての先行研究の調査を行った。点過程を特徴づける強度で比較した場合、ポアソン過程の強度は定数であるが、Hawkes過程の強度は時間依存する。Kirchner(2016)は、多変量Hawkes過程を離散観測した場合の統計量が、漸近的にINAR(整数値自己回帰過程)で近似できることを示し、統計的推測論を展開していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は先行文献の調査に十分な時間を割いたため、モデルを拡張した上での結果は得ることが出来なかった。ただし、参考とすべき文献の特定や今後の研究方針は固まっており、当初予定していた結果を来年度中に出すことは可能であると考えている。 一方で、当初予定していなかったLevy過程への拡張が見込まれることから、一部では予定した以上の研究成果が得られると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
1)Levy過程については、引き続き先行文献を調べるとともに、統計的推測論についての調査を行う。これについては、早稲田大学の清水氏との研究連携を予定している。本年度中に、推定量の提案および漸近的性質の導出を検討する予定である。
2)Hawkes過程については、Kirchnerのアイデアを配当問題に適用することを検討する。Kirchnerが扱っている点過程は多変量であり、危険理論に関する多変量化は現実的にも重要かつ新規的な話題であるため、積極的に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
生じた次年度使用額は端数であり、ほぼ計画通り使用している。次年度も引き続き、積極的に研究集会に参加し、最新の情報収集や研究成果の発表を行う。また、関連研究者との研究討論も重ねていく予定であり、そのための旅費として使用する。また、海外研究者に最新の研究成果についての講演を依頼する事も計画している。さらには、データ解析等の作業への依頼も予定しており、そのための謝金を計上する。
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