研究課題/領域番号 |
16K00036
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
白石 博 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (90454024)
|
研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2021-03-31
|
キーワード | 保険数理 / 破産理論 / Wiener-Poisson過程 / 最適配当境界 / V統計量 / U統計量 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に統計手法を提案したWiener-Poisson Modelの離散観測を利用した最適配当境界の推定量について、推定量の一致性および漸近正規性という理論的な結果の導出を検討した。 本研究で提案する最適配当境界の推定量は、各サンプルパス毎に決定する配当現価の期待値の推定量の最大化解として定義され、1つのサンプルパスから、複数の(疑似的な)サンプルパスを構成することが特徴である。この疑似的なサンプルパスは観測されたサンプルパスをいくつかの区分に分解し、各区分の増分を組み替えて並べる事で構成される。この組み換えた疑似的なサンプルパスは、無限分解可能過程の性質を利用することにより、基のサンプルパスと分布として同等となる。 また、疑似的なサンプルパスは、分解した区分の数をmとすると、重複を許せばm^m通り考えることができ、計算量として現実的では無い。したがって、ブートストラップにより、B個の疑似的なサンプルパスを構成する事としている。 理論的には、ブートストラップ基準による配当現価の期待値の推定量は、V統計量(またはU統計量)タイプの配当現価の期待値の推定量の近似であり、まずは、V(U)統計量タイプの推定量が真の配当現価の期待値の適切な推定量であるか否かを調べる必要があることが判明した。このV(U)統計量タイプの推定量は、伝統的なV(U)統計量がある定数個のパラメータの期待値の推定量であるのに対し、無限個のパラメータの期待値の推定量となっている点に違いがある。この推定量の漸近的性質の導出については、来年度にかけて更に調査を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、推定量の一致性および漸近正規性という理論的な結果の導出を検討したが、目標の結果を得られなかった。 理由としては、理論がかなり複雑であるという事が判明したためである。 目標の結果を得るには、まずブートストラップ基準による推定量とV統計量(またはU統計量)タイプの推定量との近さと、V(U)統計量タイプの推定量と真の配当現価の期待値との近さという2段階の評価が必要である。また、V(U)統計量タイプの推定量が伝統的なV(U)統計量の拡張であること、および、本研究で想定する配当現価が各パスの挙動に依存していることが、理論的な正当性の導出をより困難にしている。来年度には目標の結果を論文に取りまとめる予定だが、このような状況を鑑み、やや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度末から、本研究は早稲田大学の清水泰隆氏と共同で行っている。当該分野における専門家である清水氏との情報共有を図りながら理論的な結果の導出ならびにシミュレーションでの正当性の確認を行い、来年度の論文投稿を目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウィルス蔓延により予定されていた国外出張が中止され、旅費の未使用分が発生したため。
(使用計画)国内の関連研究者との研究討論を積極的に行う予定であり、研究成果発表や情報収集のための国内外の研究集会への参加も計画している。そのための旅費を計上した。
|