研究課題/領域番号 |
16K00041
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
北門 利英 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40281000)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ハインドキャスティング / クロスバリデーション / 階層モデル / マグロ類 / 鯨類 |
研究実績の概要 |
水産資源を持続的かつ有効に利用するためには,資源量および個体群動態を把握する必要がある.陸上の生物とは異なり直接観察することができず,推測およびモデルの不確実性が常に伴う.そこで本研究では,水産資源解析の高度化に向け,次の2つの観点から研究を行っている. 1)水産資源解析では利用するモデルの複雑さに応じて利用するデータも異なる場合があり,そのような状況ではAIC等のモデル選択規準を利用することができない.そこで,将来の資源管理でパフォーマンスを上げることを想定したハインドキャスティング(hindcasting,将来予測の能力を検証するためのクロスバリデーション)の視点からモデル選択法の提案と検証を行う. 2)個体群動態モデル内のパラメータ推測の精度を向上させるために階層型モデルを提案する.特に,モデル内の制約構造をsmoothness priorや階層分布で緩和することでパラメータを共有する方法(ランダム効果)について,実例を通してその有効性を検証する. 平成30年度は,1)に関して平成30年度のインド洋マグロ類委員会および大西洋マグロ類委員会にてハインドキャスティング法を用いた資源評価モデルの客観的な手法についてドキュメント提出およびプレゼンテーションを行い,資源評価診断方法の一つとして取り入れられることとなった. また2)に関しては,平成30年度6月に国際会議"6th Biennial International Statistical Ecology Conference"にて"Spatio-temporal modelling for population mixture of marine species"というタイトルで階層モデルによる遺伝的混合率推定の口頭発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では下記のステップを想定している.①クジラおよびマグロの研究対象の資源解析状況について,課題と解決方法について整理,②ハインドキャスティングの観点から異なるデータ下でのモデル選択法の定式化と理論的検討.③上記のモデル選択手法のマグロ類資源への応用,④階層的モデリングによる年齢構成動態モデリングと推定法の定式化,⑤上記階層的モデリングを用いたマグロ類資源解析への応用,⑥上記階層的モデリングの鯨類資源解析への応用,⑦研究課題の統合と考察 鯨類については平成30年度6月に国際会議"6th Biennial International Statistical Ecology Conference"にて"Spatio-temporal modelling for population mixture of marine species"というタイトルで口頭発表を行ったが,そこでの質疑から時間的な相関を考慮した混合率の導入の仕方について更なる検討を行うこととした. また,マグロ類についても平成30年度のインド洋マグロ類委員会および大西洋マグロ類委員会にてハインドキャスティング法を用いた資源評価モデルの客観的な手法についてドキュメント提出およびプレゼンテーションを行い,資源評価診断方法の一つとして取り入れられることとなったが,シミュレーションを通してのハインドキャスティング法自体の評価をさらに行うこととした.
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今後の研究の推進方策 |
上記に記載の通り,1) 時間的な相関を考慮した混合率の導入の仕方について更なる検討を行うこととした.この目的のために,Template Model Builderを通した階層モデル推測のためのプログラムコードを追加で作成する予定.また2)ハインドキャスティング法自体の評価についても,比較的簡易なシミュレーションプラットフォームをもとに検証する予定.これらの結果をもとに論文の作成に当たる.
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次年度使用額が生じた理由 |
追加解析の必要が生じ論文作成に遅れが生じたため.その他経費は論文の英文校閲などに充てる.
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