研究実績の概要 |
多次元・大標本・複雑なモデルの解析に有用な,対称な提案を用いる次世代モンテカルロ法を研究した.研究三年目の2018年度では2つに絞って研究を進めた. まず一つの方向は,非対称なマルコフ連鎖モンテカルロ法の理論的解析である.非対称なマルコフ連鎖モンテカルロ法を学ぶことで,対称性の意義がより明確になる. 非対称な確率過程であるPiecewise determinisitc Markov processes (PDMP)を用いたモンテカルロ法に対し,U. Warwick (UK), TU Delft (Netherlands)の研究者とともに初めて高次元解析に成功し,現在投稿中である(arXiv:1807.11358).引き続き,PDMPに対する異なった視点からのアプローチでの解析を行っており,次年度中に完成を目指す. また,第二の方向はMpCN法の発展である. MpCN法は数値計算と,高次元漸近論,エルゴード理論によって,従来手法よりも計算効率が高いことが示されていた. それに加え,行列空間への発展をUCL (UK)の研究者と,適合的手法をGoogle, Warwick U. (UK)の研究者と,またスライスサンプラーへの応用をU. Gottingen (Germany)の研究者と進めた.最初の2つの研究に関しては,主たる部分は完成しており,また最後の研究に関しても方向性はできている.次年度での完成を目指す.以上の2つのメインの研究だけでなく,スケーラブルなベイズ統計手法の解析もNUS (Singapore),九州大学の研究者とともに進めている.こうした研究成果の発表をTaipei, Singapore, Manchester, Pisa, Gottingen, Rome などで行った.また,ミニシンポジウム,シンポジウムの共同主催をTaipei, Singaporeで行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究も三年目に入り,当初計画の発展部分で大いに進展した.当初計画には無かった,Piecewise determinisitc Markov processes (PDMP)に関する研究が大いに発展し,現在論文を投稿中である. このトピックはローザンヌでのモ ンテカルロ法に関するミニシンポジウムで初めて知った,非常に新しいトピックである.本年度に共同研究が大いに発展した. TU Delft (Netherlands)の研究者を招聘して,さらに従来と異なる視点でのアプローチの研究も進んだ.年度末にU. Gottingen, U. Warwick, UCLを訪問し,新しい研究をスタートしたり,進行中の研究を議論し,研究の推進という面では当初計画以上に進んでいると言える.次年度も学会でのセッションの開催が複数予定されており,共同研究をより促進したい.一方で,年度内に完成途上であるいくつかの研究の完成を目指していたが,それは次年度に持ち越された.そのため,全体としては概ね順調とした.
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