研究課題/領域番号 |
16K00049
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
飛田 英祐 広島大学, 病院(医), 講師 (30469952)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Small Clinical Trials / 臨床試験デザイン / 分析感度 / Network Meta-Analysis |
研究実績の概要 |
本研究では,Small Clinical Trials(SCTs)のような少数の被験者であっても治療効果が真に有効であるのか無効なのかを判別する能力である分析感度を保証しつつ,治療効果を科学的に証明する方法として,革新的な試験デザインの検討およびそのデザインにおける解析方法,サンプルサイズ設定および評価方法とその妥当性についての開発・提案を行う目的である.そのため,(1)既存のSCTsの調査・把握,(2)SCTsの試験デザイン・評価手法の構築,(3)提案法の性能評価、(4)現実への適応可能性の4つのステップに基づいて,研究を遂行する計画としている. H28年度は,当初の計画どおり,SCTsに関する公表文献に基づき,既承認医薬品での試験デザインの実態調査を行い,通常のRCTの枠組みを基本としたデザイン・方法論に留まっている状況を把握した. 一方で,試験デザインに関する書籍及び国際計量生物学会(IBC2016)への参加を通じて,SCTsであっても分析感度を保証した下で効果を証明する方法論として,Network Meta-Analysisを用いた新たな臨床試験デザインと評価方法の理論構築を進めている.この新たな試験デザインと評価手法については,研究協力者である丹後俊郎先生と複数回の議論を行い,アドバイスを受けて,概念的な方法論について,2017年3月に開催された日本計量生物学会年会にて発表を行い,さらなる改善点の検討が可能となった. SCTsに対しては,現時点も適切な試験デザインや評価手法は,未だに十分に確立しておらず,革新的な方法論の開発が強く求められている中で,検討中のNetwork Meta-Analysisを用いた臨床試験デザイン・評価方法が,この問題に対する1つの解決法に繋がることが予想される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通り、H28年度は4つのステップのうち,(1)SCTsの調査・把握(H28~H30年度)及び(2)SCTsに対する新たな試験デザイン・評価手法の開発(H28~H29年度)を行うために,各種文献、書籍の入手,関係する学会等への参加,研究協力者との面談を行っているが,学内での用務のため予定していた日本統計関連連合大会へ参加することができなかった。 そのため,(2)で予定していたSCTsに関する情報収集及び他の研究者との議論の機会が少なくなったものの,(1)での調査及び関連書籍や文献情報を活用することで,SCTsに対する新たな臨床試験デザインとしてNetwork Meta-Analysisを用いた評価方法の基本的な理論構築を進めることができた.この結果に関しては,29年度以降に学会発表を予定していたが本年度内に前押しして行うことができ,研究の方向性の確認と更なる改善点に対する確認ができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策について,当初は(1)SCTsの調査・把握(H28~H30年度)及び(2)SCTsに対する新たな試験デザイン・評価手法の開発(H28~H29年度),(3)提案手法の妥当性の確認(H29~H30年度),(4)結果の公表と実際のSCTsへの適応(H29~H30年度)と計画していたが,本年度は特に(3)を中心に,研究協力者と定期的に議論を行い,検討中の方法論の妥当性を実際のSCTsやRCTに即したシミュレーション スタディーにより定量的な数値評価を行い確認する.そのシミュレーションにおいては,更なる実際のSCTsや臨床試験に関する公表文献の整理と共にプログラム・データの整理など研究を遂行する上でより作業的な負荷が高くなることから,研究補助者に依頼しながら研究を行うことで,より効率的に検討方法の妥当性を確認することが可能になると考える. また,研究成果については,理論的な方法論に対して,シミュレーションや実データに基づいた数値的な評価を加えた実用可能性を検討して,国際学会(The International Society for Clinical Biostatistics)で発表を行う予定であり,国外の研究者等の意見やコメントを踏まえて,より現実的な方法論の開発が可能になると考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2016年度統計関連学会連合大会に参加予定としていたが、期間中に急遽、学内関連業務(AMEDヒアリング)が入り、学会への参加を取りやめたため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
差額については、H29年度に開催される臨床研究に関係する学会に参加することで、予定している希少疾病に対する試験デザインの情報を収集する予定である。
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