研究課題
栄養疫学データの各変数の取扱に関して、食事パターン抽出のための既存の方法の問題点の整理および栄養学的視点から統計解析手法におけるデータの取扱を吟味し、新たな食事パターン抽出法を考案した。具体的には主成分分析および縮小ランク回帰法のアルゴリズムを精査し、栄養疫学の目的と照らし合わせたところ、主成分分析のアルゴリズムの中に各食品摂取量の疾患への影響を考慮に入れる新しい食事パターン抽出法の着想を得た。その方法の解析プログラムを作成し、他の方法とともに徳島大学の栄養疫学データに適用し性能比較を行った。他の方法では疾患発症と関連する食事パターンが抽出できなかったが、新手法では疾患と関連する食事パターンを抽出することが出来た。この新しい方法は、上記2つの既存の方法の欠点を解消しており、非常に有用性の高い方法と考えられた。運動疫学データの取扱に関して、九州大学にて加速度計を用いて測定された身体活動データを用いて検討した。ある一時点での集団における身体活動指標と疾患との関連については装着時間の調整は重要であることが解析結果からも示唆された。また座位時間の検討では座位の継続時間を考慮に入れた座位時間が重要であることが分かった。単にデータをそのまま解析するのではなく、その変数の意味合いをじっくりと考え、装着時間および座位の継続時間を考慮することで、座位時間と疾患発症との関連を得ることが出来た。また2時点における加速度計データを用い、個人における身体活動の変化も検討したが、同一個人内における身体活動の変化については装着時間の影響は大きくないようであった。
2: おおむね順調に進展している
初年度は各変数の取扱方の検討を主な目的としていたが、その目的とともに新たな発想を得ることが出来、本研究の目的である生活習慣病を科学する方法論の開発に着実に近づくことが出来ている。また分担研究者の先生方とも密に連絡を取り合うことが出来ており、方法論の開発とともにデータの整備も順調に進んでいる。以上のことから本研究は概ね順調に進展していると考えている。
これまでに発想を得た食事パターン抽出の新しい方法について、栄養疫学データに限らない統計手法として確立するために、数学的に提案法が優れた方法であることを示す。そのために数値実験を行い、目的とするものをきちんと取り出せる方法であることを示す。そして栄養疫学データだけでなく、運動疫学データにも適用し、新手法が広く有用であることを示していく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 7件)
BMC Public Health
巻: 16(1) ページ: -
10.1186/s12889-016-3570-3