研究課題/領域番号 |
16K00074
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高橋 寛 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (80226878)
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研究分担者 |
大竹 哲史 大分大学, 理工学部, 准教授 (20314528)
樋上 喜信 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (40304654)
王 森レイ 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (90735581)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 故障検査 / 機能安全 / 組込み自己テスト / 組込み自己診断 / 先進自動運転 |
研究実績の概要 |
先進運転支援システムの機能安全規格に対応するためには,その構成要素である集積回路の組込み自己診断技術の開発が喫緊の課題である.本研究では,パワーオン時や待機時の組込み自己テストに適用するマルチサイクルテストの故障検出率向上化法,および組込み自己診断機構と故障診断署名に基づく組込み自己診断法を提案する.本研究の目的は,1)パワーオン時の組込み自己テストに適用するマルチサイクルテストにおける故障検出率を向上するためのテスト容易化設計とその活用手法の開発,2)疑似期待値に基づいて故障診断署名を求める組込み自己診断機構の開発,および3)故障診断署名を利用した組込み自己診断法とその高精度化法の開発である. 本年度は,目的1)に対しては,マルチサイクルテストを利用したテストパターン削減の効果を強化するために,故障検出強化のためのテスト容易化設計法を提案した.また,その方法を車載向けMCUに適用するための要素技術(故障検出強化フリップフロップおよびその挿入位置決定法)を提案した. 本年度は,目的2)に対しては,組込み自己診断機構におけるパターン発生回路を設計した.また,次世代のメモリコンピューティングデバイスのテスト法を提案した. 本年度は,目的3)に対しては,機器のパワーオンセルフテストの実行時間短縮のためのテスト集合分割法を提案した.また,組込み自己診断の高精度化のために組込み自己診断向けの診断用テストパターンの生成法を提案した. 本年度の研究成果は,1編の査読付きIEEE論文,3編の査読付き国際会議論文,4編の電気関係学会四国支部大会および1編の情報科学技術フォーラムにおいて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目的1に対しては,機能安全を維持するために組込み自己テストの短時間(少数テストパターン)での高テスト品質(高検出率)を実現しなければならない.そこで,本研究では,マルチサイクルテストにおける故障検出率を向上させるために,故障検出強化フリップフロップを実現するテスト容易化設計法を提案した.また,その挿入位置決定法をプログラム言語によってコンピュータ上に実装した.実験結果から制約条件である90%の故障検出率を得るために必要なテストパターン数は,通常テストに比べておよそ7分の1に削減できた.この結果は十分に現在の製品レベルに対応できるため十分な達成度である.この結果を1編の査読付きIEEE論文,1編の査読付き国際会議論文,および2編の電気関係学会四国支部大会において発表した.特に,査読付きIEEE論文は当該の研究分野で最も権威ある雑誌への掲載である. 目的2に対しては,組込み自己診断機構におけるパターン発生回路を設計し,その特許化にむけて処理を進めている.また,次世代のメモリコンピューティングデバイスのテスト法を提案した.具体的には,メモリコンピューティングデバイスを構成するメモリ間のインターコネクトにおける縮退故障,ブリッジ故障に対するテスト法を提案した.提案手法をメモリコンピューティングデバイスのプロトタイプに適用し,有効性を評価した.この結果を1編の査読付き国際会議論文,および1編の情報科学技術フォーラムにおいて発表した. 目的3)に対しては,組込み自己診断においては,故障診断精度を維持しながら,診断に要するテストパターン数を削減することが診断時間の短縮のために必要である.そこで,診断用パターンを利用した適応的な故障診断を行うために,診断用テストパターンの選択法を提案した.この結果を1編の査読付き国際会議論文,および2編の電気関係学会四国支部大会において発表した.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,目的1においては,故障検出強化フリップフロップを利用した回路に対して消費電力と故障検出率の関係を調査した結果に基づいて新たなテスト容易化設計回路を提案する. 目的2においては,組込み自己診断機構として提案した診断用署名生成器および診断用署名に基づく故障候補の指摘器を設計し,その設計を評価する.また,各テストパターンのパス/フェイル情報を求める回路の設計とその性能評価を行う.また,メモリコンピューティングデバイスのインターコネクトのオープン故障に対するテスト法を提案する. 目的3においては,故障診断署名を利用した組込み自己診断法とその高精度化法開発する.故障診断テストに対する故障の区別可能性を評価尺度としてテスト集合の分割法を提案する.また,被検査回路のフリップフロップの故障検出能力に基づいた診断用テストの生成法を提案する.コンピュータシミュレーションによってプロトタイプをベンチマーク回路に適用し,故障候補数などの診断精度を評価する.さらに,ランダムパターン発生回路にリシード機構を追加した診断用テスト系列生成回路を検討する. 研究の分担としては以下を予定している.消費減力を考慮した故障検出強化フリップフロップを設計し,その選択法を実装し,計算機実験によってテスト時間と故障検出率の評価観点において性能評価実験を行う(樋上,王担当).また,提案した組込み自己診断機構における故障診断署名に基づく診断法を提案する(大竹,高橋担当). 組込み自己診断向けの診断用テスト生成法を提案する.また,故障診断署名に基づく故障診断法のプロトタイプを開発する(大竹,高橋担当).
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:研究打ち合わせを愛媛大学にて開催しただけで,大分大学での開催を実施しなかったため. 研究補助としての大学院生の雇用が少なかったため 使用計画:最終年度であるため,研究成果の報告のための旅費とその準備のための大学院生の雇用が必要である.
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