研究課題/領域番号 |
16K00075
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
樋上 喜信 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (40304654)
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研究分担者 |
高橋 寛 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (80226878)
王 森レイ 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 助教 (90735581)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 故障診断 / マルチサイクルテスト / ブリッジ故障 |
研究実績の概要 |
平成28年度に実施した研究の成果は,主に次の2点である.(1)パスの遅延変動を考慮したマルチサイクルテストでの故障診断法を開発した.(2)ゲート信号線とクロック信号線のブリッジ故障に対する故障診断法を開発した. (1)の研究では,温度や電源電圧の変動によって遅延量が変動し,その結果,長いパス上を伝搬した信号が遅れるような現象を考慮している.信号伝搬が遅れると,フリップフロップに値が取り込まれなくなり,そのような状況を考慮して故障診断を行う手法を開発した.マルチサイクルテストとは,スキャンシフト動作を行うことによって,外部入力よりフリップフロップに値を印加した後,システム動作で回路を動作させる.その後,フリップフロップの値をスキャンシフト動作を行うことによって,外部出力において観測する手法である.このような手法は,通常動作に近い環境で回路を動作させてテストすることを可能にするという利点を持つ.開発した手法の有効性は,ベンチマーク回路に対するシミュレーション実験を行うことによって確かめられた.実験結果では,平均2個以下に候補故障数を絞り込むことができた. (2)の研究では,ゲート信号線とクロック信号線のブリッジ故障に対する診断法を開発した.対象ブリッジ故障は,ゲート信号線の信号変化タイミングが,クロック信号に影響を与えるような現象をモデル化している.しかしながら,従来法では,静的な回路接続情報のみを用いて信号変化タイミングを計算しており,実際と異なる場合があった.本手法では,信号変化のあったゲート信号線から後方追跡を行い,信号変化タイミングを計算する手法を導入し,より正確にそれを計算することができる.ベンチマーク回路に対するシミュレーション実験を行った結果,平均1.1~3.7個の候補に絞り込むことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LSIの高速化・高集積化に伴い,そのテストや故障診断に関する多くの課題が発生している.高速化に伴う課題としては,信号伝搬の微小な遅延が回路動作に影響を与えるという課題がある.「パスの遅延変動を考慮したマルチサイクルテストでの故障診断法の開発」は,この課題に取り組んだ研究であり,信号伝搬が遅延しフリップフロップに取り込まれる値が,シミュレーション上と実際の回路で異なるような場合であっても,従来と同等程度の故障診断性能が得られることが分かった. また,高集積化されたLSIではブリッジ故障が発生する可能性が高くなるため,ブリッジ故障に対する故障診断法の開発が重要である.本研究では,従来あまり対象とされなかった,クロック信号線のブリッジ故障に対して,信号伝搬遅延を考慮した,有効な故障診断法を開発することができた. 以上のように,信号伝搬遅延を考慮した故障診断法についての課題を解決する手法の開発が順調に進んでおり,本研究が順調に進展していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
故障診断法には,原因-結果分析法と結果-原因分析法と呼ばれる2つの主要な手法がある.原因-結果分析法では,予め故障を想定し,シミュレーションを行った結果を故障辞書と呼ばれるファイルに保存し,これを用いて故障位置を指摘する.その際,問題となるのが,故障辞書のファイルサイズである.大規模回路では,故障数が膨大であり,また,遅延を考慮したシミュレーションでは,出力の論理値に加えて,信号値の変化時刻も記憶する必要があり,辞書サイズが増加する傾向にある.そこで今後は,故障辞書サイズを削減し,かつ,故障診断性能を低下させないような手法について開発する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度当初は,ワークステーションを購入する予定であったが,開発アルゴリズムにおいて,メモリ使用量を削減する手法などを導入することによって,現存の計算機を用いてシミュレーションを実行することができたため,計算機の購入を延期した.そのため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は,企業より提供された大規模実回路データに対して開発した手法を適用する予定である.そこで,大規模メモリを搭載した計算機が必要となり,そのような計算機を購入する予定である.
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