研究課題/領域番号 |
16K00075
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
樋上 喜信 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (40304654)
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研究分担者 |
高橋 寛 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (80226878)
王 森レイ 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (90735581)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 故障診断 / テストパターン数削減 |
研究実績の概要 |
平成29年度に実施した研究の主な成果は,「フィールド故障診断においてテストパターン数を削減する手法の開発」に関するものである.この研究では,システムが現場で稼働中に故障診断を行うフィールド故障診断における問題を考えている.フィールド故障診断では,システムのスタートアップ時やアイドル時などの僅かな時間に故障診断する必要がある.そこで故障診断において故障箇所を絞り込むために必要なテストパターン数を削減する手法を開発した.提案法では,ある時点で残っている候補故障に対して,テストパターンごとに区別不可能な故障数を求め,区別不可能数の小さいテストパターンから優先的に選択する手法(手法Aとよぶ)を導入した.また,ある時点で残っている候補故障のすべてのペアについて,区別可能なテストパターンを求め,最少被覆問題を解くことで,少ないテストパターンを選択する手法(手法Bとよぶ)も導入した.手法Bを実行するためには,ある程度候補故障数が少なくなっている必要があるため,手法Aから手法Bに切り替えるタイミングを決定するため,候補故障に関してn1という変数を導入し,候補故障数がn1以下になったとき,手法Bを適用するようにした.このような手順をアルゴリズム1とよぶ.一方,候補故障に関してn2という変数を導入し,候補故障数がn1より大きい場合,n2個の候補故障をランダムに選択し,最少被覆問題を解く手順も実装した.このような手順をアルゴリズム2とよぶ.ベンチマーク回路に対する実験を行った結果,与えられた順でテストパターンを選択する場合に比べて,提案法を用いることでテストパターン数を削減することができた.アルゴリズム1とアルゴリズム2を比較した場合,実験を行った7回路中5回路において,アルゴリズム1がより少ないテストパターンを選択することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高信頼性を要するシステムにおいて,システム稼働中に故障検査および故障診断を行う,フィールドテストの重要性が高まっている.平成29年度はフィールドテストを対象に,故障検査・故障診断における基本故障モデルとして,縮退故障を対象に研究を推進した.研究の成果としては,フィールドテストで問題となる故障診断時間を短縮するための手法を開発し,実験によってその有効性を確認した. 以上のように,フィールドテストにおける故障診断時間の問題を解決することができ,本研究が順調に進展していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究成果を基に,対象故障を遅延故障に拡張し,フィールドテストにおける故障診断時間の短縮を実現する手法の開発に取り組む予定である.遅延故障では,連続2パターンを印加する必要があり,テストパターン数の増加が予想される.また,信号伝搬遅延量の変動を考慮し,出力結果をどの程度詳細に計算するかによって,故障辞書サイズの増大が予想される.開発する手法では,テストパターン数,故障辞書サイズ,故障診断時間を最適に制御するような技法を導入する. また,マルチサイクルテストにおいて信号伝搬遅延量が変動する場合について,効果的に故障診断を行う手法についても検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)平成29年度において,国内研究会で発表予定であったが,日程上都合がつかなかったため発表ができず,予定していた旅費を使用しなかった.そのため,次年度使用額が生じた.また,学生に実験等で協力してもらい謝金を支払う予定であったが,学生の協力なしで実験を終えることができたことも,次年度使用額が生じた理由である. (使用計画)これまでの研究成果を,国際会議,国内学会等で発表する予定であり,その際の旅費として使用する予定である.
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