研究課題/領域番号 |
16K00081
|
研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
弘中 哲夫 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (10253486)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 配置配線 / 学習データの自動生成 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本年度はCNNニューラルネットワークへ入力される論理素子の配置状況をより画像に近づける試みを行った.具体的には論理素子の配置位置を画像上の点とした他,論理素子間の接続をネットで接続される素子間をつなぐバウンディングボックスとして表現し,バウンディングボックスを枠線や色を持つ面として入力画像上に表現したものを用いた.そして,この方法をさらに進めた方法としてネット毎に用意されたチャネルをチャネル間で加算して単一のチャネルに統合することでネット数に関わらず単一チャネルの入力することを試みた.その結果,単一チャネルの入力しか持たないCNNであっても処理できる事が明らかになった.この方式の有用性を確認するため, Yann LeCun が発明した LeNet-5を模したCNNニューラルネットワークを用いて32×16のアレイを構成する再構成型デバイスMPLDにおいて2つの配置のいずれがより良い配置であるか判定するように学習させた.その結果,8種類のベンチマーク回路から200000件の配置を作成して学習させた結果,未知の回路の配置に対して90%以上の確度で2つの配置の内より良い配置を判定できるようになった. さらに,2つの配置を比較してより良い配置を判定するように学習したCNNニューラルネットワークをコスト関数として用いてSA法により配置し,配線するCADを作成したところ,実際に配置配線が可能であることが確認できた.現在のところ配置配線品質は従来のコスト関数にまだ及んでいないが,深層学習を用いて学習するCADが可能であることが示せた.今後はCAD自ら行った配置配線結果を用いてニューラルネットワークの再学習を行う枠組みを研究する他,より適切なニューラルネットワークアーキテクチャの探求,および,さらにより良い配置配線問題の定式化を追求していく予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
改良の余地があるものの当初予定していた深層学習を用いたCADシステムの枠組みを作成することができた.しかし,配置配線問題の評価に使用するニューラルネットワークの構造が現在適切なものが選ばれていると言えず,今後さらなる研究調査が必要である.また,配置問題をニューラルネットワークでも解けるように定式化することに関しても今後とも引き続きより良い定式化を追求していく必要がある. ニューラルネットワークの計算処理,学習データ生成の高速化をFPGA実装により達成する予定であったが,FPGA用CADの能力やFPGAデバイスの能力により想定していた高速化ができなかった.しかし,代わりにGPUサーバを購入し,ニューラルネットワークの計算処理と学習データ生成の計算処理をGPUで行うことにより,研究に必要な計算性能を達成することができた.しかし,現状配置配線を行っている再構成デバイスの規模がまだ小さく,今後より大きい再構成デバイスに対応したCADシステム開発が今後の課題である.
|
今後の研究の推進方策 |
現在,ニューラルネットワークに入力配置やネット情報を加工し,ニューラルネットワークへの入力情報としている,しかし,今後より高い精度でより良い配置を選択できるようにするためには,現在のように完全に画像化した形ではなく,もっと個別のネット情報が識別できるような方法を考案する必要がある.また,現在使用しているCNNニューラルネットワークについてもYann LeCun が発明した LeNet-5を用いているが,これも段数やマスク数,プーリング層などなどまだまだ最適化を行う必要がある.今後はこれらの最適化を行った現在以上に高い精度でより良い配置を選択できるように改良していく.また,同時に現在比較的小規模な再構成デバイスを対象としたCADシステムの構築を行っているが,今後これをさらに大規模化させて行く予定である.大規模化に伴い今後増える計算処理の増加をどのように高速処理するかも今後解決して行く予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初使用予定の旅費と実旅費との差分で残額が発生した.残額は次年度に消耗品購入費として活用する予定である.
|