研究課題/領域番号 |
16K00085
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
越智 裕之 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40264957)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 2段昇圧型チャージポンプ回路 |
研究実績の概要 |
本研究では、0.5V程度の電圧しか得られないオンチップ太陽電池で同一LSIチップ上の回路を駆動するための基盤技術を確立すると共に、これを応用した無端子自給自足LSIを実現することでその有用性を示すことを目的としており、平成29年度は下記3項目に取り組んだ。 (1) 0.5V程度の電圧から4.0V程度の高電圧を生成する高効率昇圧回路の物理設計とチップ試作による評価を行った。研究代表者らはこれまでに0.18μmプロセスでCross Coupled Charge Pump回路により0.5Vからの昇圧が可能であることを実証しているが、高い効率を達成するためには大容量のキャパシタを使用することが前提であり、このために多大なチップ面積を必要とすることが問題であった。これを改善するため、閾値電圧以下の入力電圧を閾値電圧以上に昇圧する前段昇圧回路と、その出力を用いて生成される閾値電圧以上のクロックで動作する後段昇圧回路などからなる、2段昇圧型チャージポンプ回路を考案し、昨年度、回路シミュレーションにより電力効率の評価を行った。これを実際の集積回路チップで実現する場合、電源電圧、環境温度、製造ばらつきなどの影響、とりわけ、これらによるリングオシレータの発振周波数の変動を抑制することが課題であったが、本年度、リングオシレータのバイアス回路を改良することで、この問題を解決できる目途が立ち、チップ試作を行った。これまでのところ、期待通りの測定結果が得られている。 (2) CMOS互換不揮発メモリの単体セルの特性測定用チップの試作と評価を行った。その結果、書き込み後2日程度は閾値電圧変化が容易に観測できることが確認できた。 (3) 0.5V程度の電圧で動作可能な温度センサならびに電圧センサのチップ試作を行い、実測を行った結果を取り纏めた。また、改良に向けた検討を行い、新たなチップ試作を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昇圧回路に関しては、当初の計画で候補に挙がっていた方法の中から2段昇圧型チャージポンプ回路の有効性がシミュレーションで示されていたが、これを実際の集積回路チップで実現する場合、電源電圧、環境温度、製造ばらつきなどの影響、とりわけ、これらによるリングオシレータの発振周波数の変動を抑制しなければならないという課題が発生し、その解決のため当初より余分にチップ試作を行う必要が生じた。不揮発メモリに関しては、単体セルの閾値電圧変動を試作チップで測定し、必要な基礎データが得られており、現在、論文投稿の準備を進めている。センサ回路に関しても、29年6月に国内研究会で成果を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
要素技術の確立が当初の計画よりやや遅れてしまったので、平成30年度は、個々の要素技術を確立して成果を発表することを最優先としつつ、これらを統合したセンサデバイスの実証チップの実現についても検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度計画していた一部のチップ試作を本学の経常的な研究費にて執行することができたため、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせ、微小な消費電流を高精度に計測できる測定器(ソース・メジャー・ユニット)を調達し、研究を加速したい。
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