本研究は、0.5V程度の電圧しか得られないオンチップ太陽電池で同一LSIチップ上の回路を駆動するための基盤技術の確立とこれを応用した無端子自給自足LSIの実現を目的としており、平成30年度は下記3項目に取り組んだ。 1. 入力電圧0.5V程度から4.0V程度の高電圧を生成する高効率昇圧回路の基礎検討と評価を行った。研究代表者らはこれまでに0.18μmプロセスでCross Coupled Charge Pump回路により0.5Vからの昇圧が可能であることを実証しているが、これまでチャージポンプ回路の評価指標として広く使われていた電力変換効率EPを最大化するための設計空間探索を行うと、クロック周波数を抑えるために大容量のキャパシタを使用する結果となり、チャージポンプ回路のキャパシタの面積が同一チップ上の太陽電池の面積を圧迫する問題が考慮されなかった。このため、チャージポンプ回路のキャパシタ面積と太陽電池の面積の和で与えられるチップ面積を考慮した面積効率EA(チップ面積あたりの出力電力)という新たな評価指標を導入し、EAを最大化するための設計空間探索を実施した。その結果、EPの最大化をする場合に比べ、比較的小容量のキャパシタと高いクロック周波数を採用した方がEAが最大化されることが明らかになった。 2. 標準的な0.18μm CMOSプロセス互換の不揮発性メモリ素子の要素技術検証試作チップの測定を行った。その結果、書き込み消費電力が極めて小さいFNトンネリング方式で5Vの書き込み電圧を10秒間印加すれば閾値電圧を3V程度まで上昇させられることや、書き込み後は1日程度の保持が可能であることなどが確認できた。 3. 電源電圧0.5V程度で動作可能な温度センサならびに電圧センサの回路方式を検討し、チップ試作と実測を行い、温度や電圧の測定に適した回路方式やパラメタを明らかにした。
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