研究課題/領域番号 |
16K00099
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
阿萬 裕久 愛媛大学, 総合情報メディアセンター, 准教授 (50333513)
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研究分担者 |
天嵜 聡介 岡山県立大学, 情報工学部, 助教 (00434978)
横川 智教 岡山県立大学, 情報工学部, 准教授 (50382362)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ローカル変数 / 識別子名 / 開発者特性 / 個人差 / ソフトウェア品質 / コメント文 |
研究実績の概要 |
平成 28 年度は,自動データ収集プログラムの開発を行い,15 個の Java プロジェクトから約 3900 KLOC ソースコードを入手して,それらの全バージョンについて,コメント文並びにローカル変数のデータを抽出した.Java 以外の言語に対するデータ収集についても検討したが,ローカル変数の型やスコープといったデータを抽出するにあたり,Java 以外の言語では解析プラットフォームが充実していないこともあり,まずは Java を対象とした分析に専念することにした. 収集したデータに対して統計解析を行い,どういった変数名の場合に品質の低下が疑われるのかという観点から分析を行った.その結果,複数の単語を合成した複合語のかたちをした名前(例えば,resultSet 等)が登場している場合,そうでない場合に比べてバグ潜在の疑いが強いことが確認できた.また,その差はスコープの短長に関わらないことも確認できた.研究の背景として,コーディング規約で謳われている「ローカル変数名は短くてよい・短くすべき」という規則に着目しているが,その規則に従うことの有用性を定量的に示すことができたと考えている.なお,コメント文の存在は,その種のバグ潜在の疑いをより強くする傾向も確認できている.これらの成果を学術論文にまとめ,国際ワークショップにて発表したところ,多くの参加者から興味深い研究成果として高く評価された. また,上記のものとは異なる視点として,コーディング規約違反の動向分析や開発者の貢献度分布の分析も行った.それらについても学術論文にまとめ,国際会議にて発表(2件)を行った.特に,開発者貢献度分布に関する発表については,参加者から高く評価され,Best Presentation Award を受賞した. 現在はローカル変数やメソッドの名前の異常度に着目した研究成果を国際会議に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ローカル変数データの収集に関しては,当初の目的(複数の言語で 20-30 プロジェクトからデータ収集)を十分に達成したとまではいかないが,目的としているプログラム解析の難易度も考慮すると,概ね順調であると考える.なお,開発者の貢献度分析については,目標を大きく上回り,複数言語で 60 個のプロジェクトからデータ収集が行えている. 初年度で既に論文誌 1 件,国際会議・国際ワークショップで 4 件の論文が採録され,現在も 5 件が投稿中である.国内での口頭発表も 6 件行っており,論文発表数では当初の目標を十分に上回っている.
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今後の研究の推進方策 |
現在,研究分担者と共著で国際会議へ論文を 5 件投稿中であり,これらが採録されれば国際会議で発表を行い,多くの研究者と情報交換を行うことで研究の質を高めていく予定である.仮に不採録となったとしても,査読コメントを参考に研究の改善ポイントを洗い出していく.
データ収集については,自動データ収集プログラムの改良を行いつつ,より多くのデータを収集していく.そうして,より一般性の高い知見が得られるよう分析を深めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,研究分担者とともに参加を計画していたスペインでの国際会議について,残念ながら論文が不採録となったために予定していた額の助成金を執行できなかったことが大きな理由である.また,論文誌に採録された分について,掲載は 2017 年度であるため掲載料としての支出も次年度にずれこんでいる.
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次年度使用額の使用計画 |
研究分担者と共同で国際会議(11 月にカナダにて開催)に論文を投稿中であり,これが採録されれば予定していた研究発表が可能である.また,別の会議(7 月に静岡県,8 月にオーストリアでそれぞれ開催)にも関連する論文を投稿中であり,それらで採録されればそちらでも発表するため,旅費並びに参加費のかたちで助成金を使用する予定である.
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