本研究の狙いは,不揮発性 DIMM (NVDIMM) という比較的新しいメモリ・デバイスを活用し,レジリエントな信頼性の高いストレージ;基盤を実現することである.特に,NVDIMM-N という規格の NVDIMM を用いる.NVDIMM-N は,通常時は DIMMとして動作するため,通常のメモリ・デバイスと完全に同等に扱うことができ,かつ電源遮断時にはその内容がフラッシュメモリに自動的に保持されるようになっている.そのためバイト・アドレッシング可能かつ低遅延の不揮発性メモ リとして扱うことができる. これまでに,ジャーナル領域を NVDIMM-N 上に配置することによって,データジャーナリングのオーバーヘッドを低減し,それによってファイルシステムのレジリエンスの向上を試みてきた.しかし,ジャーナル領域を NVDIMM-N 上に配置しただけでは,最終的にNVDIMM-N から二次記憶への書き出しがオーバーヘッドとなり,期待した性能が得られないということが分かってきた.今後,大規模データを扱うための基盤となるクラウド環境を想定した評価実験を行ったところ,本研究で開発を進めている NVDIMM に基づくジャーナリングの機構を,クラウド環境,とくにコンテナ型のクラウド環境に展開しようとすると,コンテナ間でのジャーナリングが競合し,著しい性能低下が発生してしまう.さらに,それぞれのジャーナリング I/O がどのコンテナに起因するものか判定できないため,適切なアカウンティングが不可能となる.平成 30 年度における研究開発では,ファイル I/O からジャーナリングに起因する I/O を推定し,ジャーナリングのための I/O が競合を起こさないよう制御する機構の開発を行った.この機構はユーザレベルで動作するためデプロイメントが容易である.現在,この内容を論文にまとめている.
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