研究課題/領域番号 |
16K00105
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
位野木 万里 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (10739634)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 要求獲得 / 仕様検証 / 一貫性検証 / シナリオ生成 / 要求工学 / ソフトウェア工学 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、高品質な要求仕様書の生成のために、分類網羅用語辞書とルートシナリオ要素定義表からシナリオを派生させる仕組みを考案し、「分類網羅シナリオ生成」機能を開発し、シナリオの一貫性検証支援ツールを拡張した。期初計画では【H28年度の期初の研究実施計画】に示す、実施項目1の研究課題を解決する予定で、(1-1)シナリオの分類網羅に関する検証知識のルール化を試みた。その結果、実際の仕様書には同一分類を網羅する仕様の記述は少なく、同一分類を網羅するシナリオ自動生成支援がより重要であることが明らかになった。そこで、有識者インタビューと実仕様書の分析を通して、同一分類を網羅するシナリオの生成ノウハウを抽出し、シナリオ生成の機能を開発した。本作業は平成29年度に予定していた[実施項目2]の(2-2)の開発に相当する。なお、開発試作の一部は、ツールベンダーに委託した。 平成28年度の成果により、例えば「担当者が顧客情報を登録する」というシナリオから、顧客情報の修正、削除、検索の4つのシナリオの自動生成が可能になり、高品質な要求定義の生産性向上が期待できる。
【H28年度の当初の研究実施計画】[実施項目1]シナリオの一貫性検証知識の形式知化と支援ツールの開発の研究課題を解決する。具体的には、(1-1)有識者の備える検証ノウハウを検証ルールと辞書として形式知化し、(1-2)シナリオの一貫性検証支援ツールを開発する. 【H29年度の当初の研究実施計画】平成28年度に得られた結果を基にして、[実施項目2]シナリオの一貫性検証支援ツールの評価およびシナリオ自動生成機能の追加の研究課題を解決する。具体的には、(2-1)シナリオの一貫性検証支援ツールの適用評価を行い,(2-2)シナリオを自動生成する機能を開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の期初計画では検証機能の拡充を予定していたが、現実の仕様書では、設計要素に対するシナリオが網羅的に記述されているケースが多くないことが想定されたため、平成29年度に予定していた作業を前倒して実施した。具体的には、分類網羅用語辞書に基づき設計要素の用語を派生させることで、一文のシナリオから複数の仕様を自動生成する仕組みを考案し、シナリオの一貫性検証支援ツールを拡張する試作を行った。 研究計画の一部変更はあるもの、作業の前倒しを行ったことで、おおむね順調にしている状況であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度では、平成28年度に得られた結果を基にして、シナリオの一貫性検証支援ツールの機能拡張と実案件への適用評価ならびにフィードバックを実施する。具体的には、平成28年度の成果である、シナリオ中に出現する設計要素用語を同一分類内で派生させる「同一分類網羅の知識」を活用し、分類網羅検証の知識をルール化し、これらを組み込みシナリオの一貫性検証支援ツールをさらに拡張する。分類網羅検証の知識とは、例えば、顧客情報の登録についてのシナリオが存在するなら、顧客情報の検索、顧客情報の変更、顧客情報の削除といった、顧客情報管理の一連のシナリオが同一の分類として網羅した状態で存在しているかどうかの検証である。 また、検証ルールと辞書を構造化し、各組織が検証ルールや辞書をカスタマイズすることが可能なようにルール辞書支援機能を開発する。なお、支援ツールの開発加速化のために一部機能開発においては、ソフトウェアベンダーに試作を委託する。 加えて、開発する分類網羅検証機能とシナリオ自動生成機能を組み込んだツールを、実案件に適用して、支援ツールの適用評価を行う。支援ツールによる検証結果を有識者に提示することで、検証知識と支援ツールの有効性、妥当性を評価する。評価結果では、有識者による検証ノウハウが適切に具現化されていることを分析し、検証知識および支援ツールへの改善事項を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも安価に物品購入ができたこと、国内旅費や謝金が発生しなかったこと、仕様書の分析は研究者本人で行い学生バイトが不要になったことから期初予算計画に対する次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
第一に、シナリオの一貫性検証支援ツールへの分類網羅検証機能および辞書やルールの構造化支援機能の拡張のための開発試作費として利用する。第二に、これらツールを用いた要求仕様の検証知識の拡張と改善の仕組みの開発、シナリオ検証手法、検証知識の形式知化・共有化の確立のために、成果の公開と実務者からのフィードバックを得るための評価活動のために活用する。
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