研究課題/領域番号 |
16K00107
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
滝本 宗宏 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 教授 (00318205)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分岐発散 / くくり出し / 大域値番号付け / GPU / 選択命令 |
研究実績の概要 |
本研究では,コンパイラ共通基盤COINSの中間表現LIRから,GPU用コードPTXを生成することによって,COINS上でGPU向けの低水準最適化を開発できる環境を実現することを目的としている. 本目的達成に向けて,平成28年度では,次のことを行った. 1. 分岐発散を低減する従来手法の調査および,選択命令を含むGPU 特有の命令の振舞いと対応するPTX 表現の調査. 2. 大域値番号付けを用いたくくり出しに基づく分岐発散低減法の実現. 1については,選択命令を積極的に利用する手法を中心に文献を調査した. 2は,一度プログラムを走査するだけで多くの冗長な式を除去できる大域値番号付けという最適化手法に,if文内に存在する式を,if文の上方に移動する拡張を加えた手法である.大域値番号付けは,従来,if文内に存在する共通部分式を除去することによって,分岐発散を低減できる.本手法では,さらに,if文内の式を外に出すことによって,共通部分式を増加させる効果をもつので,より多くの分岐発散を低減できる.本手法は,if文のthenあるいはelse部のいずれかだけに存在する式でも,if文の上方に移動する可能性がある.このような場合,逐次実行では,式が存在しなかった側にも計算コストを導入することになるので,実行コストが増加する.一方,GPU上では,if文のthen部もelse部も1度ずつ実行されるので,たとえ片方からしか式が移動しなかったとしても,実行コストが増加しない点が重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では,平成28年度に,COINS のLIR において, φ関数を任意の場所に挿入できるように拡張することになっていたが,最終的に実現する分岐発散低減の新しい手法を先に開発した.本手法は,φ関数の任意な位置への挿入を必要とする手法を補完する効果があり,順序は前後したが,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
COINSのLIRをにおいて,φ関数を任意の場所に挿入できるように拡張し,PTXの選択命令を,LIR上で表現できるようにする.その後,LIRからPTXへの変換器を実現する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に,3,000円強の残額が生じたが,本科研研究で有効に利用するには,少額すぎるので,次年度配分額とともに利用することにした.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の配分額と合わせて,有効に利用する.
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