研究課題/領域番号 |
16K00110
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
沢田 篤史 南山大学, 理工学部, 教授 (40273841)
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研究分担者 |
野呂 昌満 南山大学, 理工学部, 教授 (40189452)
張 漢明 南山大学, 理工学部, 准教授 (90329756)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ソフトウェアアーキテクチャ / 組込みシステム / 形式手法 / 開発支援環境 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ネットワーク接続された組込みデバイスからなるサイバーフィジカルシステム(以下,CPS)のソフトウェア開発を統合的に支援するための工学的基盤を確立することである.本研究では,この目的を達成するために,三つの重点研究項目,すなわち,(a)プロセス統合型アーキテクチャモデルの定式化,(b)開発支援ツールの統合方式の確立,(c)CPSソフトウェアの形式検証手法の確立を設定している. これら課題のうち,(a)では,CPSソフトウェアのアーキテクチャ設計に関する先行研究を調査するとともに,コンテキストアウェアネスを考慮した組込みシステムのためのソフトウェアアーキテクチャを定義した.組込みシステムはその構成要素であるセンサより取り入れる外界の状況やシステム自身の内部状態に応じてその振舞いを変化させるのが一般的であり,アーキテクチャ定義は本研究の対象であるCPSアプリケーション開発を支援するための共通構造であると言える. (b)では,CPSソフトウェア開発支援に関する先行研究を調査するとともに,(a)で定義したアーキテクチャに基づくアプリケーションフレームワークについて考察した.このフレームワークは,CPSアプリケーションのための開発プロセス,すなわち,モデル変換やプログラムコード生成の方法や開発に関する制約を規定するもので,開発支援ツールを構築する基盤として位置付けることができる. (c)では,組込みシステムの形式検証に関する研究動向について調査するとともに,CPSにおける並列事象を簡便に取り扱うことのできる形式仕様記述法と,MVCスタイルに基づいてCPSのアーキテクチャを記述する仕様テンプレートについて検討した.これらの成果は,CPSのアーキテクチャやそれに基づく支援ツール開発のプロセスを曖昧性なく記述するための基礎となるものと位置づけることができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の重点課題として設定した(a)プロセス統合型アーキテクチャモデルの定式化,(b)開発支援ツールの統合方式の確立,(c)CPSソフトウェアの形式検証手法の確立の三つについて,以下,それぞれに進捗状況を評価する. (a)では,コンテキストアウェアネスを考慮した組込みシステムのためのソフトウェアアーキテクチャを定義した.アーキテクチャ定義が開発プロセスに及ぼす影響を明確化することで,開発プロセスを統合したアーキテクチャにつながると考えており,この課題はおおむね順調に進展しているものと評価している. (b)では,(a)のソフトウェアアーキテクチャに基づくアプリケーションフレームワークについて考察した.アプリケーションフレームワークの設計は,モデル変換系やソースコードの自動生成系など,アーキテクチャに基づく開発プロセスの自動化ツールを統合する方式を確立することにつながり,この課題はおおむね順調に進展しているものと評価している. (c)では,CPSアプリケーションの設計検証において問題になる並列事象の記述を簡便に行う記法とともに,CPSを含む組込みシステムのための仕様記述テンプレートについて検討した.これら記法およびテンプレートは,システムの構成要素数の増大に伴って組み合わせ爆発的に増大する要素間の相互作用数を抑制する手段となることから,CPSのためのスケーラブルな検証方法に向けて研究が順調に進展しているものと評価している. 三つの課題を通じ,関連する先行研究の調査も行ったが,この分野の研究や技術開発の進展は早く,平成29年度以降においても研究動向の調査は継続して行う必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
研究の重点課題として設定した(a)プロセス統合型アーキテクチャモデルの定式化,(b)開発支援ツールの統合方式の確立,(c)CPSソフトウェアの形式検証手法の確立の三項目について,平成28年度においてはいずれも順調に研究が進展していると評価できることから,関連する研究動向の調査を継続するとともに,今後はそれぞれの成果を深化させるための研究・開発を行う. (a)では,すでに設計したアーキテクチャモデルについて,アプリケーション開発プロセスを統合し,記述する方法についてより具体化することを検討する.(b)で予定するフレームワークや開発支援ツールの具体化の研究・開発と連携しながら,フレームワークやツールの前提とする開発プロセスを記述する観点や記法について,既存のソフトウェアアーキテクチャ文書化手法などを参考に検討する. (b)では,(a)との密な連携により,アーキテクチャに基づくアプリケーションフレームワークと,フレームワークを基盤とする開発で利用するモデル変換ツールやコード生成系の基本設計を行う.設計にあたり,モデル駆動アーキテクチャやモデル駆動工学の理論的な背景についての調査も行いながら研究・開発を進める. (c)では,すでに提案した記法やテンプレートを用いて,具体的なCPSアプリケーションの仕様を記述し,記述した仕様を形式的に検証するプロセスについて考察する.CPSアプリケーションにおいては,システムの構成要素数の増大に対して現実的な時間で設計の検証ができることが重要であり,その観点からの有用性に配慮した研究・開発を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の実質的な進捗にあわせて学会参加(発表)を行ったことから,学会参加先,回数が年度当初の見込みとは異なる結果となった. 全体として学会参加に係る費用(旅費・学会参加費)が当初見込みより安価となり,3万円あまりの次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に生じた次年度使用額については,引き続き行う関連研究動向調査のための旅費に充当する予定である. 物品費,人件費,その他についてはおおむね当初計画にしたがって執行する予定である.
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