研究実績の概要 |
去年度の分析ではプログラム理解タスクを与えた被験者の脳波と視線移動の関係性に着目し,それぞれの値が大きく変化したタイミングを特徴とした学習器がタスクの成否を予測できることを明らかにした. 本年度は特徴として用いているタイミング情報を1)視線と脳波の変動のどちらがより早く発生しているか(発生順序),および2)変動間の間隔(発生間隔)の2つに分割し,組み合わせの異なる4種類のモデルについて精度を比較した.分析では各被験者のアルファ波とソースコードに対する注視割合を5秒ごとの区間に分割し,前区間からの差分が大きい時間帯を求める.さらに注視割合が大きく変化した上位3区間(E1, E2, E3)と,アルファ波が大きく変化した上位3区間(A1, A2, A3)について,全組み合わせ(E1-A1, E1-A2, ... , E3-A2, E3-A3)におけるEnとAnの発生順序と,発生間隔を特徴量としてランダムフォレストでモデルを作成し,タスク成否を予測する. 結果として,いずれの特徴量も用いない(EnとAnが同タイミングで発生しているか,のみを情報として用いる)モデルの予測精度が55.7%であったのに対して,2)発生間隔のみを用いたモデルと両方の特徴量を用いたモデルの予測精度が82.9%であった.一方で1)発生順序のみを用いたモデルの予測精度は54.3%と低く,発生間隔が重要な特徴であることが分かった.また,プログラム理解タスクの成否ごとに特徴量を見ると,タスクに成功(プログラムの動作を時間制限以内に回答できた)したときにEnとAnの発生間隔が小さく,プログラムを理解した際にはソースコードに対する注視とアルファ波の増加が連動している可能性が明らかになった. また,本研究の発展的な成果として,プログラム理解タスクを与えた被験者の一部から脳波からERPと呼ばれる特徴的な特徴が見つかった.
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