研究課題/領域番号 |
16K00117
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
董 冕雄 室蘭工業大学, 工学研究科, 准教授 (20728274)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | モバイルネットワーク / エネルギー効率 |
研究実績の概要 |
28度の課題はCrowd SensingネットワークにおけるSustainability、すなわち、電力消費Hotspotの解消による持続可能性の確保を目的として研究を行った。災害発生時に被災エリアの状況把握(安否確認の情報伝達も一種の状況把握と考えられる)は、エリア外の人にとってもエリア内の人にとっても重要である。それが大都会になるほど波及面が広く、影響は大きい。都市部の被災エリアにおいて、一般的にいくつかのHotspotがあると言われている。例えば、駅やデパートや映画館など人の出入りの多い場所である。それらのHotspot周辺では多くの通信が行われるため、モバイル・デバイスで構成されるCrowd Sensingネットワークは被災エリアの状況把握や情報伝達をするのに、無線センサネットワーク(WSN)と似たような特性を持つ。すなわち電力消費Hotspotの形成によるノードの電力消費量が不均一となる問題である。理想は、Hotspot周辺のデバイスが均等にエネルギーを消費することである。以上の観点から、本研究はまず、モバイル・デバイス間における動的なスリーピング・スケジュール・アルゴリズムの研究を進めた。このスリーピング・スケジュール・アルゴリズムは近辺の各デバイス間の協同的なエネルギー情報の交換によって成り立つ。ただし、その情報交換自体にエネルギーを消費するため、効果的な周期を考慮することでトレードオフの最適なバランスを決める必要がある。具体的には数式によるモデル化や数値解析、およびシミュレーションによる習気で考案したアルゴリズムの検証を行った。得られた研究成果の一部は、国際会議や国際的学術論文誌へ論文として投稿し、掲載(予定)された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は主に、関連研究の幅広い調査やモバイルネットワークにおけるエネルギー効率に関するアルゴリズムの考案、および数値解析やシミュレーションによる提案アルゴリズムの検証を行う事となっていたが、当初の予定通りこれらの計画を順調に実行できた。研究成果の一部は、IEEE Global Communications Conference (Globecom)やIEEE International Conference on Communications(ICC)といったIEEE Communications Society最大規模の国際会議を含む会議で論文として発表(確定)された。また、無線通信分野においてImpact Factorが世界最高クラスとなっているIEEE Transactions on MultimediaやIEEE Transactions on Information Forensics and Securityを含む学術論文誌でも論文が掲載(確定)されている。さらには、2016 IEEE 84th Vehicular Technology Conference (VTC2016-Fall)にて最優秀論文賞を受賞するなど、以上のことから当該年度の研究課題の進度は、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はStability、すなわち、モバイル・デバイスのJoin/Leaveによるネットワーク安定性の問題である。都市耐災害ネットワークの末端ノードが人間(モバイル・デバイス)である故、ノードのJoin/Leaveはネットワーク全体の安定性に影響を及ぼす。人間のモビリティが予めわかれば、上述の問題を動的なトポロジーの変更で対応できる。既存研究より、震災後のモビリティ・モデルは実は普段の生活パターンと関連性があることが分かっている。本研究は研究目的で述べたオープンデータを用いて、都市の人々のモビリティ・モデルの特徴を抽出することで動的なトポロジーに対応できるアルゴリズムを設計する。研究成果をまとめて国際会議IEEE INFOCOMへの投稿を目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展に伴い、当初予期し得なかった新たな知見が得られ、これを使用してより高度な研究成果を得るために、新たな知見の分析を行う研究計画に変更が必要となった。よって当初予定していた実機による検証実験も翌年度へ持ち越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度に予定していた実機実験を行うため、実験用モバイル・デバイス等の実験機器の購入および実験へ参加する学生への謝金が計上される。実験によって得られた結果をもとに、研究成果をまとめて論文にし、国際会議や学術論文誌への投稿も検討する。
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