研究課題/領域番号 |
16K00120
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
湯 素華 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (80395053)
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研究分担者 |
小花 貞夫 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (60395043)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歩車間通信 / 歩行者測位 / チャネル状態情報 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究では、歩行者は周辺車両の車車間通信信号を傍受して車両への距離を算出し、GPS衛星に加え、車両をアンカーとして自端末の位置を算出する。さらに、自端末の位置情報を無線で車両へ通知し、自端末の危険度合いに従って送信制御を行う。主な業績は下記である。 (1)距離計測。車両からの電波は異なる経路(パス)を通り、それぞれ直接波や反射波として異なるタイミングと強度で歩行者に到着し、それはチャネル状態情報によって表される。直接波のあり・なしにより、チャネル状態情報が異なるため、それを利用して、機械学習でチャネル状態情報から直接波があるかどうかを識別するモデルを作成した。チャネル状態情報においては、直接波と反射波が分かれる場合、直接波のみの強度を抽出できる。そして、直接波の強度と距離の関係から、直接波の強度を用いて距離を推測する再帰関数を作成した。シミュレーションによって、直接波の有無の識別率が95%以上であり、直接波・反射波などの総受信信号強度と比べて、直接波の強度を利用することで、距離誤差を大幅に削減できることを確認できた。 (2)測位演算。歩行者と衛星、歩行者と車両間の距離を用いて歩行者の位置を算出する方式を設計した。3次元地図データを基に都市部の建物モデルを作り、レイ・トレーシング・ツールで建物による衛星測位信号、車両からの信号の遮蔽・反射を模擬し、実環境に近い設定で提案測位方式を評価した。都市部環境で、GPS衛星測位手法と比べて、測位誤差を半分以下に低減できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、おおむね順調に進展している。具体的には、下記の5方面から研究を行っている。(1)チャネル状態情報から直接波あり・なしを識別するモデルを確立し、直接波の強度から距離を算出するモデルを作成した。(2)歩行者と衛星、歩行者と車両間の距離を用いて歩行者の位置を算出する方式を設計した。(3)レイ・トレーシング・ツールを用いて建物の遮蔽・反射を模擬して、シミュレーションにより提案方式を評価した。(4)パソコンと無線LANカードを用いてテストベッドを構築し、初期実験を行った。(5)歩車間通信については、危険度合いの導出とそれに基づく通信方式を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
今まで、直接波の強度から距離を推測する手法を考えてきたが、無線受信機の時間分解能の影響で、直接波と後続の反射波が重なってしまい分離できないことがよくある。その際、重なっている直接波と後続波の総合強度から距離を算出すると誤差が大きくなる。今後、チャネル状態情報から距離を直接推測する手法を考案し、無線受信機の時間分解能の影響も評価する予定である。 測位中、衛星と歩行者の間の距離、車両と歩行者の間の距離を同様に扱っていたが、距離推測誤差が異なるため、今後、距離の誤差特性を考慮して測位方式を改良する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3次元地図データとシミュレーションソフトを購入してから、予算がわずか20万円残り、高性能PCに必要な費用が足りないため、次年度にまわすことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
シミュレーションとデータ解析のために、高性能PC(40万円ぐらい)を1台購入する予定である。
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