研究課題/領域番号 |
16K00121
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
策力 木格 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90596230)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 車両アドホックネットワーク / クラスタリング / 車両クラウド / 断続的な接続環境 / 高密度環境 / VANET / 経路選択 |
研究実績の概要 |
初年度においては,高密度環境におけるクラスタリングに基づいた通信プロトコルを提案して,コンピュータシミュレーションを用いて提案プロトコルを評価した.強化学習を用いて,ファジィ論理に利用するファジィルール,メンバシップ関数を最適化することに焦点をあて,より現実的な無線電波伝搬モデル,車両移動モデルを用いて,提案プロトコルの評価と改善を行った. 本プロトコルでは,自律分散的にクラスタリングを行い,クラスタヘッド(中継ノード)のみによりパケットを中継することで送信者の数を削減し,より効率的な無線リソースの利用を図る.クラスタヘッドの選択が適切ではないと,効率が悪くなるまたは信頼性が低下するなどの問題が生ずる.しかしながらこれらの評価尺度は互いに相反する.この相反の状況はVANETにおける車両の分布や移動速度に依存し,最適解を求める画一的な評価式を求めるのは難しいと考えられる.各ノードで保持している情報は定期的なHelloメッセージの交換から得られたものであるため,必ずしも正確ではなく,不完全,不確かであるといえる.また次の中継ノードとのリンクがよくても,経路全体の品質がよいとは限らない(経路はクラスタヘッドの選択で決まる).これらの理由からクラスタヘッドを選択することは難しい問題となる.そこで本研究では,ファジィ論理により車間距離,移動状況,信号強度を統合化する,また強化学習を用いて全体的に最適なパラメータを決定することで安定かつ効率的な通信を可能にする方式を提案した.ファジィ論理は人間の思考と似たような近似的な推論を扱うことができ,複雑なシステムを制御することが可能となる.強化学習は,現在の状態を観測し,一連の行動を通じて報酬が最も多く得られるような方策(ファジィルール,メンバーシップ関数)を学習できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,車両が高密度で分布する,または車両間リンクの中断が多発する(断続的な接続環境)劣悪な通信環境を考慮したVANET通信プロトコルを提案することを目標としている.初年度の計画では,高密度環境におけるクラスタリングに基づいた通信プロトコルを提案して,コンピュータシミュレーションを用いて提案プロトコルを評価することを予定した.当初の計画通り,プロトコルの提案を行い,ファジィ論理に利用するファジィルール,メンバシップ関数を最適化することに焦点をあて,より現実的な無線電波伝搬モデル,車両移動モデルを用いて,提案プロトコルの評価と改善を行った.さらに,2年目に予定していた断続的な接続環境対応プロトコルの一部の提案と評価を行った.研究成果を国際会議1件,研究会発表2件にて発表した.また論文誌1件,国際会議2件は投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には,断続的な接続環境を想定したVANET通信手法に焦点をあてる.中継車両の選択が適切ではないと,データが目的地まで届かない,または無線リソースの利用効率及びスループットが低下する場合がある.そこで本研究では,車両間距離,移動速度,信号強度をファジィ論理により統合し,無線リンク品質,車両の移動予測,ノード分布情報に基づいて,中継車両を選択する.さらに,無線通信のブロードキャスト特性に対するネットワークコーディングの有効性を利用して,低オーバヘッドでデータを複数の車両に配布することにより,低遅延,高スループットを達成する.中継車両の数,ネットワークコーディングによるデータの冗長レベルと通信品質(スループット,遅延)の関係を強化学習コントローラで学習することで,ネットワーク環境に応じて自動的にパラメータを調整できる通信プロトコルを提案する.またエンドツーエンド接続に依存するマルチホップ通信方式とDTN方式を組み合わせることでスループットの最大化を図る. 平成30年度には,1年目と2年目の提案手法を連携させ,通信環境の変化に迅速に適応できるプロトコルを設計する(ファジィ論理と強化学習によるパラメータ調整で実現).提案プロトコルを実デバイスに実装して,実際にVANETを構築して,提案プロトコルの実環境での動作検証を行う.さらに音声,ビデオなどのアプリケーションを用いて評価する.動作検証により,提案プロトコルの実用化に向けた課題を明らかにして,実際に使用できる見通しをつける.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表用の予算について,論文誌の査読結果が年度内に来なかったことにより,平成28年度で予定されていた関連論文誌掲載料,国際会議参加費を平成29年度で実行することにした.そのため,平成28年度の予算の一部を平成29年度に繰越した.
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次年度使用額の使用計画 |
次の年度の予算と合わせて研究成果発表のための論文誌掲載料,国際会議参加費などで使用する.
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