研究課題/領域番号 |
16K00123
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
梅津 高朗 滋賀大学, データサイエンス学部, 准教授 (10346174)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スマートフォン / 環境センシング / ナビゲーション |
研究実績の概要 |
スマートフォンをセンサー端末として応用する手法について、実環境で模擬実験を行い、その結果を学会などで報告するとともに、論文としてまとめて投稿を行った。具体的には、街路を通行する人の流れを車上から撮影した映像データ、撮影した場所や移動速度や方向のデータとともに集約する。撮影された映像データから歩行者の姿を検出することで歩行者数を推定し、場所などのデータと併せて処理することで、街路単位での人流を推定する手法である。この手法ではGPSによる位置情報や方位センサー、加速度センサーなどを搭載したスマートフォンはドライビングレコーダーとして用いるのに最適な端末と言える。畳み込みニューラルネットワークを手動で作成した正解データを用いて学習させておき、記録された映像から切り出した画像から歩行者の人数と位置を推定する。自動車の移動も考慮して人流のデータとして推定する手法を用いて検出誤差率を1割程度に納めることができた。また、バス交通における運行状況の収集などへの応用を考え、地方都市におけるバス事業の最適化や利用状況に基づいた経済的な採算性などに関する検討を行った。データが公開されている新潟交通や彦根市のバス路線の乗降データや利用者数などのデータを分析した。効率化のための路線の整理にはより細かな運行データなどの収集が有効であると思われ、通信機能を持つセンサー端末の応用事例として有効だと思われる。また、路線バスの減少分をデマンドバス事業で補填する試みも行われているが、あまり利用が進んでおらず、簡便な利用のためには使いやすい端末などが必要だと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的な実装事例について、実環境で撮影したデータの分析を含む実用性の検討を行い、学会で口頭発表するとともに論文としてまとめて投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以前に行った実験結果を取りまとめ、センサーデバイスとしての性能を確かめる。旧型スマートフォンの再利用で最も適した分野は何かを検討し、検討結果を国際会議に論文誌に投稿するほか、それに基づいた、スマートフォン用のセンサーアプリや、交通情報を集めるサーバアプリなどを作成して公開することで、環境センシングシステムが低コストで実現できる下地作りに取り組む。 ドライブレコーダーや環境センシングの他の応用についても検討し、入力されたデータに対するそれぞれの処理について、スマートフォン上で行うか、行わずにデータをそのまま保存するかを選択できるような構造で作成する。それぞれの処理について、行った場合と行わない場合のCPU負荷やストレージ消費量、バッテリーの消費など、データ処理に必要なコストと省いた際に追加で必要となるストレージ容量を計測する。また、使用環境の要件を定義できるよう、使用目的に応じてストレージの容量、バッテリーの容量や外部からの電力供給の有無、データ回収方法などについて定式化を行う。計測したバッテリーの消費量などと、与えられた使用環境の要件から、線形計画などを用いて、どの処理をスマートフォン上で行わせることが最も効率的かを自動的に導き出す手法を確立する。 また、検討したシステムについてもまとめを行い、それぞれのアプリやツールを公開できる水準まで完成させる。選定したセンサー類についての情報や、アプリの使い方についてのドキュメントを作成し、アプリ自体も事前の知識が無くても利用可能な程度に使いやすいよう実装するなど、本研究課題を通して得られた知見を広く使えるように工夫をする。また、ソースコードを再利用可能なライセンスの下で公開し、同様のアプリ開発や、センサー情報収集についての研究に応用できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議への投稿が不調に終わるなど出張計画が想定通りに進まなかったため。
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